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私の言い分も聞かずにかごを片手にレジへ向かってしまったフジの背中を見送ることしか出来ずに、フジのことが気になりつつも仕事を最後までやり遂げた。定時で終わった仕事から解放されて、更衣室で制服から私服に着替えた私はスーパーから一歩外に出た。
「あ、おつかれー」
「！」
私のことを本当に待っていたフジの姿に驚く中、買い物袋を手に持ってないことを確認して一度は家に帰っているのだと考える。でも、だとしても私の仕事が終わる時間まで把握しているとは限らないし、まさか一度帰ってからずっと待ってたの？
「フジ、いつから待ってたの？」
「ん？さっき来たばっかりよ俺」
「…」
優しさに溢れた言葉は嘘なのだとすぐにわかった。さっき来たという言葉は絶対に嘘だとわかった私は小さくため息して、フジに苦笑いを見せる。
「ご飯、行こっか」
「そーこなくっちゃ！」
「でも本当に大丈夫？実況があるんじゃ…」
「大丈夫大丈夫」
「今は４人集まってもいい動画にならない気がするから」と小さく呟いたフジの独り言のような呟きは、私の耳にも届いていて視線が下に向いてしまう。
「Aちゃん？」
「ごめんね、フジ」
「なにが？」
「私のせい、だよね」
「実況撮らないことが？そんなわけ、」
「私、皆と出会ってから迷惑ばっかり掛けてるよね」
自嘲することしかできなくて、笑って誤魔化す私はなんて情けないのだろうか。もっと伝えなきゃいけない言葉って、たくさんあるはずなんだけどな……。
「……ねえ、Aちゃん」
私を呼ぶ優しい声。フジはきっと何も知らないから、私に対して優しい態度でいてくれるのかもしれない。否、逆か…知ってるからこそ優しいのかもしれない。フジは昔から、優しい人だったから…、
「俺は男だから、Aちゃんも頼りにくいかもしれない。友達として、頼りないかもしれない。だけどさ…話してほしい」
「…」
「Aちゃんとは、まだ再会したばかりだしお互いに知らない時間がある。だからこそ意思疎通なんて難しいと思う」
「フジ…」
「話したくないなら話さなくていいよ。でも、頼ってほしい。１人で悩まないで」
どこまでも優しいフジの言葉に、視界が歪んだ。
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作者名：わたがし | 作成日時：2020年11月25日 12時
