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先ほどまでのモヤモヤした気持ちが少しだけ楽になったからだろうか、ヒラの声を聞いていると安心してしまっていた。
『ねえ、Aちゃん』
「ん？」
『ーーキヨと、付き合ってるの？』
突然ヒラが、電話越しに呟いた一言。理解するために時間が掛かって、やっとの思いで吐き出された「…ぇ？」というか細い声は今の私にとって精一杯の反応だった。
「…はは、え？どゆ、意味…？」
『キヨが好きなんでしょ、Aちゃん』
「ち、違うよ。そんなわけ」
『キヨと仲良く歩いてたじゃん』
『よかったね』と、まるで祝いの言葉を投げるようにヒラは電話越しに笑っている。
まさか…嘘でしょ？ヒラは、知ってる…の？
思い出すのは唇の温もりと、キヨの言葉。背中を流れる冷や汗のせいか自棄に身震いがする。
「ヒラ、私…」
『お似合いだよ、キヨとAちゃん』
「聞いて…」
『今日はそれが言いたかったんだ』
「ヒラ…」
『電話でごめんね』
「聞いてよッ！！」
私の声に耳を傾けてくれないで、先々自分で話を進めているヒラに声を張り上げる。あの時も、ヒラは一方的に話して私の言葉を聞いてくれなかった。
「私は、キヨと付き合ってない。なんでそんな勘違いしてるのかわからないけど、誤解しないで」
『誤解ってなんだよ』
「だってッ…」
『じゃあAちゃんは、好きでもない人とキスするわけ？』
ヒラは今まで聞いたことないくらい低い声で、怒りを露にしている。その言葉でやっと理解する。
ヒラは見ていたんだ…、あの場所にいたんだ。
「それ、は…」
言葉に詰まる。何を言えばいいのかわからなかった。誤解されるようなことをしてるのはまさに私自身。友達として居たいと思ってるくせに、キヨの気持ちをすべて否定できなかった。
『…俺、Aちゃんのこと好きだよ。もちろんキヨも好きだ』
「…」
『だから、俺は……２人を応援してる』
違うんだよって、否定できたら楽なのに。
どこまでも否定していたなら、きっと私はこんなにも言葉に詰まることもなかった。自分の優柔不断さが招いた結果だった。
ヒラに、軽蔑されても可笑しくない。
「ごめん…」
『なんで謝るの』
「友達、失格だよね…私」
『…まったくだよ』
ごめんね、…ごめんなさい。
私は最低な人間で、友達を持つ資格もない人間なのかもしれない。
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作者名：わたがし | 作成日時：2020年11月25日 12時
