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漫画とかドラマとか見てると思うことがある。
ハッピーエンドが約束された物語ほど幸せなことはない。所詮架空の物語で、フィクションで。だからこそ語られる誰かが望んだ物語を自由自在に描いて、最後は皆幸せに暮らしましたとさって、終われるならどれだけよかっただろう……。
ハッピーエンドが存在するならどうか、俺の恋物語もどうか…ハッピーエンドにしてください、なんてな。
無理なのは百も承知。
既に終わりが見えた物語。嗚呼…、虚し。
「キヨ」
「ん？」
「お前さ、なんかあった？」
動画編集が終わって、完成した動画を確認していたら目の前の席に座ってパソコンを弄っていたこーすけが声を掛けてきた。そーいえば俺、最俺ハウスで編集してたんだったっけ…なんてボーッとした意識の中でまるで他人事みたいに思う。
何かあったのか訊かれたら確かに何かあったのかもしれないが、何もなかったと言えば何もなかった。
思い出すことすら容易い唇の温もりと柔らかさに、また鼓動が高鳴りそうになったけど、何事もなかったみたいに俺は「んーーー…」と面倒そうに声を漏らした。
「……お前さ、Aちゃんとなんかあっただろ」
「なんもないって」
「フジから聞いたぞお前……」
あらら、こーすけくんの耳にも俺が恋患っていることが届いてしまったか…。それにしてもフジの奴口軽すぎやしないか？なんで話すんだよ。こっちは笑い話じゃないんだぞ。
「あのさ、キヨ」
「なんだよ。今気分じゃないから今度にしろよ」
「ヒラのことなんだけどさ」
「はぁ？ヒラがなんだよ」
「あのさ、」
こーすけの口が重そうに開こうとした瞬間、俺の電話が着信音を鳴らし始めた。誰からだよ…、と内心でぼやきながら携帯を手に取るとそこにはフジの名前。
あいつから俺に電話してくるなんてなかなか珍しいと思った。普段から俺も掛けないしフジも滅多に掛けてこないから、ただただ登録されてるだけの番号が久しぶりに画面に表示されている。
「…電話出ないの」
「お前の話後で聞くわ」
「いいから、はよ出ろ」
礼儀としてこーすけに断りを入れたのに流されてしまって思わず言い返してやろうと思ったけれど、仕方なく携帯を耳にあてがった。
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作者名：わたがし | 作成日時：2020年11月25日 12時
