【短編集】恋する君の唄【実況者】 (ページ6)

今日:7 hit、昨日:1 hit、合計:7,270 hit

傷だらけのヒーロー(ky) ページ6

俺は自分が傷ついてもいいと思ってる。例え傷だらけになっても、大切な人が笑顔で居てくれるならそれだけで救われると思っているからだ。
その人が笑って未来を迎えられるなら、俺はなんだってできる気がする。こんなのはただの綺麗事かもしれないけど、まじで俺はそう思ってる。
だからこそ、俺は大切な人が笑顔で幸せになれる道を探す。その道が、例え自分にとって苦難だろうと構わない。
それで大切な人の笑顔が見れるなら…俺は、それでいいから。自分以外の誰かを想って苦しむ自分もなかなか嫌いじゃないと思えるようになったから。

だから俺は、今日も平気で自分を殺す。

「キヨくん！」

笑顔で俺を呼ぶ大切な人。俺はそちらに振り返り、微笑むんだ。
一緒に居れなくていい、隣を歩けなくていい。

「私、結婚するよ」

幸せそうに笑う大切な人に、俺は微笑み返すことに慣れた。
最初はとても苦痛で仕方なかった。幸せになってほしいのに、その幸せを崩したいとさえ思ってしまっていた。
でも、今は大丈夫。もう慣れた。苦痛に慣れた。だから俺は微笑み返す。

「おめでとう」

心の底から、お祝いの言葉を吐く。
おめでとう、A、と。彼女を想って吐き出した言葉は、不服にも嫌いになれなかった。

「キヨくん…ありがとうね」

彼女を想って口にしたはずなのに、何故か一瞬眉を寄せた気がした。
しかし、すぐに笑顔。きっと気のせい。