【短編集】恋する君の唄【実況者】 (ページ33)

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自己肯定感皆無(hr) ページ33

「Aちゃんさ、顔上げてよ」
「無理っ！」

今顔上げたら、バレちゃうから！私は気配のある方とは逆の方を見る。すると、そんな私の両頬に細い手を添えられて優しく上を向かされた。その拍子で涙が流れる。

「俺を見てよ。拒否されると辛いんだけど」
「無理！」
「俺は、今のままのAちゃんが好き」
「！」

「無理して背伸びする必要ないよ、不安なら出来る限り、その不安を取り除くから。だから、いきなりお酒飲んだり煙草吸ったりしないで」と苦笑いされた。

「俺なんて常に自信ないよ。いつかはAちゃんに捨てられるんじゃないかって…ずっと不安なんだ」
「そんなこと…」

ヒラは、私には勿体無い素敵な人だよ。
だからこそ、私はいつも思う。もっとヒラに似合う女になりたいって。

「…私、ヒラとお酒飲みたいんだ」
「じゃあ、最初は度数の低いお酒にしようよ。お酒にもいろいろ種類があるんだからさ。あんな酒瓶は駄目だって」

まるで子供みたいだ。私はもう、とっくに成人してるのに、お酒も飲めないなんて。

「カクテルなんてどう？」
「カクテル？」
「そうそう。色とりどりでお洒落なお酒」

「俺簡単なカクテルなら作れるから今度作ってあげる」と笑うヒラ。私としては気を遣わせてしまったのではないかと、申し訳ない気持ちで一杯になる。

「どーしたの？」
「ヒラはカクテルとか…普段飲まないじゃん」
「あはは、そんなことか。大丈夫、俺カクテルも好きなんだ実は」

どこまでも大人なあなたに、私は優しくエスコートされっぱなし。

「ヒラ」
「ん？」
「ありがとう」

涙で濡れた頬を指で拭いながら、彼は笑って頭を撫でてくれた。耳に届いた頼り無さそうな声は「俺から離れないでね…」と呟いて私の掌を強く握った。