君と死ぬのも乙なこと(ky) ページ3
「親が腹痛めてまで産んでくれた大切な体を傷付けるなんて頭大丈夫？」「そんなことしても死ねないくせに」
たくさんの言葉が脳内を支配する。私だってなんで自分を傷付けるのかわからない。
死にたいと思うのにまだ息をしている自分がわからない。私は何がしたいの？手首にある無数の切り傷、流れ落ちる大量の血を見て生を感じる。
私…まだ生きてるんだ。意識が朦朧とする中で、何度も切り傷の上から傷を作る。
痛みを感じないのは、痛みを通り越してるから。
ーーー嗚呼……このまま、死にたい。
「…っなにやってんだ阿呆！」
ナイフを持った手を誰かに握られた。誰…？確認するためにゆっくりと振り返る。そこには友達のキヨの姿。
あー…見られちゃった。
なんでここにいるのか、という疑問よりも今は１人でいたくて私は彼を突き放すような言葉を吐き捨てる。
「……ほっといて」
「なに言って」
「死にたいの！」
もういやだ、生きることがつらい。苦しくて苦しくて苦しくて苦しくて、こんなことしかできない私を、皆異質な目で見る。
いやだ、この中で生きるなんてできない。私は異質なんだ。生きたくない、死にたい。
「………出てって」
静かにキヨへ告げる。しかし彼は動かない。
それどころか私の隣に座って私の握るナイフでそのまま、自分の手首を切った。床に流れ落ちた真っ赤な血が、私の血と混ざる。信じられなくてキヨを見上げた。
彼は何をしているんだ、何故手首を切ったの？
「なにして……」
「なかなか痛ぇな」
「血がっ…」
「お前もだろ」
私が慌てるのはおかしいかもしれない。だけどそれほどまでにキヨが手首を切ったことが信じられなかった。
「お前馬鹿だな。一人で…」
傷だらけで真っ赤な腕を優しく撫でる。
「死にたいなら俺も連れてってくれ」
「ぇ」
「離れんなよ」
真っ直ぐに私の目を見るキヨに目を見開く。
なんで…そんなこと、
「一人は、寂しいだろ」
はにかむキヨの言葉に涙腺がゆるんだ。歪む視界、欲しかったぬくもり。
「俺が一緒にいるから」
拒絶しかされなかった私を、ただ受け入れてくれた。それが純粋に、嬉しかった。
「キ、ヨ…」
「お前と一緒に、いさせてくれ」
我慢の限界で頬から流れ落ちた涙を親指で拭いながら、キヨは綺麗に微笑んだ。
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作者名：わたがし | 作成日時：2020年5月11日 9時
