【短編集】恋する君の唄【実況者】 (ページ19)

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生意気な子羊の誘惑に(ky) ページ19

あー、やべぇ。これはきつい。なんなんだよ、ほんと勘弁してくれって。頭痛がする頭を抱えて、目の前の状況をもう一度確認し、再度勘弁してくれと思った。
頭を抱えてしまいたいほど俺が参ってしまっているのには理由がある。

「お前なにやってんの…」
「あ、キヨおかえり」

いや、おかえりじゃねーよ！何人の部屋勝手に入り込んでベッドに普通に寝転んで本読んでんだ！勘弁しろよ！！

「今すぐ帰れ」

いろいろとまずい。チラッと見える日焼けしていない白い肌が艶かしい。違うぞ。俺が目にしたのは故意的に、ではなく目の前の女が警戒心もなく無防備にしているせいだ。
ちょ…服の隙間からチラッと腹見えてるから！！
いやいや違う、断じて違う俺の意思じゃない。俺の意思関係なく馬鹿がだらしないのが悪い。誰でもいいからそー言ってくれ。

「この漫画面白いね。これ貸してよキヨ」
「あーあーわかった何でも持ってってくれて構わねぇから早く帰れ」
「なにそれ」

ベッドに寝転ぶ体を起こして座った馬鹿…通称Aは俺を睨んでくるが、睨みたいのは俺だからな。お前自分が何してるかわかってんのか？お前が女で、俺は男だって、わかってんのか。勝手に俺の家に上がってくるなって頼むから。

「早く帰れ」

目線を逸らし、Aを見ないようにする。今視界に入れたらやばい、変なこと考えちまう。そんな俺の葛藤をよそに立ち上がったAは、俺の前に仁王立ちすると睨み上げてきた。

「なに？私がいちゃ悪いわけ？」
「ここ、俺ん家な」
「いいじゃんべつに。今さら減るもんでもないでしょーが」

いやいや何言ってんの。こいつは何もわかっちゃいない。目の前の男がどーいう男なのか、何もわかっちゃいないその態度が余計俺を苛立たせ、脳が行動を掌に指示する。
Aの腕を掴んで、強引に壁に押す。逃げられないように隙間なくAを壁に追い込むと、影になった恐怖に揺れる瞳を見下ろす。

「…俺は男なんだよ」

お前がなんとも思ってなくとも、俺のテリトリーに入り込んだ以上、お前を無事に帰せる保証はまったくないんだよ。それを理解しろ馬鹿。