君の不幸を願ってる(fj) ページ1
「彼がねー、すごく優しくてねー」
「すぐ別れる、に一万」
酒の席でべろんべろんに酔っぱらて惚気話をする目の前の女の子に嫌味を言ってやったのはつい一ヶ月前の話。
「今回は一ヶ月か、長かったじゃないの」
「なんなのホント…」
肩を落として目に見えてわかる程大袈裟に落ち込んでいる彼女を横目にこちらこそ落ち込みたい。
俺が思うに、彼女は男を見る目がない。
少し優しくされればすぐコロッと気持ちを持っていかれる程だ、そのくせ一途で尽くすタイプ。惚れっぽく重い。
一目惚れ、なんてことも今まで何度もあった気がする、話を聞いてる限り。だからだろうか、すぐに男に捨てられる。
いいカモだと思われているのだろうか、ロクな男と関係を持たない。
今までで一番ひどかったのは、飲み屋のカウンターで隣同士になった人に一目惚れしたこと。それからアタックしたらしく、晴れて恋人同士になったが、二股だったとか。
「Aはね、もう少し慎重に男を選ぶべきだよ？」
「フジに言われたくないよ」
なんでそこで俺の話になるのよ！と言いたいが、Aは何やら俺が自分のことを棚に上げてることが気に入らないらしく不満をぼやく。
「フジだってコロコロ女代わってるくせに」
「語弊がある」
「どこが」
不貞腐れる彼女を流し目に、ため息を吐き出す。
酔っぱらい相手にムキになっても仕方ない。
今日は雲がどんよりしていて今にも一雨来そうな空だった。そんな空を見上げて他人事のように思う。
フラれた腹いせか知らないが、いきなり家に来て「デートして」なんてよく言えたよね。しかも酔ってるし。
確かに彼女の言うとおり、彼女ができても俺自身、長く続かない。
コロコロ女が代わる意味何も知らないだろ？
初めてお前が彼氏できたって言った時、俺はこんなに彼女がコロコロ代わってた？彼女なんていた？
どんな女も長く続かない意味がお前にわかる？
「お前こそ、尻軽だと思われてそうだよね」
嫌味をぼやいてやれば睨まれる。睨みたいのはこっちだっての。
「なんでそんなこと言うわけ？」
「俺のこと何にも知らない癖に知ったようなこと言うから悪いんだよ」
不機嫌になってるAを他所におちゃらけた様子で笑いながらぼやく。そう、何もわかっちゃいない。
ポツ…と鼻の天辺に水滴が落ちてきた。降ってきたなぁ、と思いつつ歩く。
そーいえばデートってどこ行くのよ、雨降ってきたし帰りたい。
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作者名：わたがし | 作成日時：2020年5月11日 9時
