332:テスト返却 ページ32
ーAsideー
拳が風を切る音。
私は何度か業を殴った。きっと私も何度か業に殴られてる。
痛みを感じることができないから特別な反応もできなかった。
頬から流れる業の血に誘われる。美味しそうだと思った。口端から垂れそうになる唾液を飲み込む。
最初はお互い感情に任せて拳をぶつけ合ったが、そうしているうちに頭の整理がついて少し冷静になる。
息を整えながらも構えの姿勢を崩さない業。
「喰ってないの？」
『え？』
素っ頓狂な声を出すと業はクスリと笑う。
「傷の治り遅いじゃん。てか人間も喰種に怪我させられるんだ」
『…そうみたい』
なんだかおかしくなって笑い飛ばす。キョトンとしていた業もつられて笑った。
「殴ったらスッキリした」
『圧倒的サイコ感』
「ふはっ、……俺って意外と口下手なのかも」
『わかるよ』
自分が自分に飲み込まれてしまいそうで怖いんだよね。そのことを誰かに伝えたいけどうまくいかなくて焦っちゃうんでしょ？
『ほんと、わかる』
「…あー、複雑」
『複雑？』
「うん。…殴ってごめん」
『別にいいよ。こんなの日常茶飯事だって』
業は鞄を拾い上げると帰ろうかと言った。
『うん』
今日も欠けた月が私たちを見下ろす。
ー
翌朝、寺坂と業に適当に挨拶をして自席に腰を下ろすとそれに気づいた数人が吹き出した。
「ぶっ！？…だっはっはっ！！」
「お前ら喧嘩でもしたの？」
「あはは！すっげー！お揃いじゃん！！」
業と顔を合わせる。絆創膏、ガーゼ。
「ちょっと色々あってね」
「色々って…女子殴っちゃダメだろ」
『いいんだよ。喰種だし』
「そういう問題じゃ、」
『それにちょっと楽しかったから』
「仲直りはしたんですか？」
律が身体ごとこちらに向ける。
『仲直りっていうか』
「喧嘩したわけじゃないから」
「え、どういうこと？」
「『ただ殴り合っただけ…？』」
「「やっば」」
みんなから軽く引かれたのはいうまでもない。HRでタコ先生にもギョッとされたが、特に追求はされなかった。
そして一限。テストが返却される。
「全教科の採点が届きました」
さっきまでの和やか(？)な雰囲気は何処へやら。教室中に緊張が走る。
「では発表します。まずは英語から」
先生は茶色い封筒の中から一枚の紙を出した。
「E組で1位。そして学年でも1位」
両方で一位。ということは、ひとまず一本確定か。
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eye(プロフ) - 名倉さん» ありがとうございます！夢主ちゃんの複雑な感情が伝わってよかったです。更新頑張ります！ (2019年5月25日 0時) (
レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
名倉 - part7おめでたうです！ 真相が明らかになっていく...！ 夢主ちゃんの感情がひしひしと...こう、ひしひしと伝わってきて、すごいなぁと思います。eyeさんのペースで更新頑張ってください！ (2019年5月24日 22時) (レス) id: c1e6d1df23 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - よつぎさん» ありがとうございます！なかなか物語が進まず申し訳ないです…！完結目指して頑張ります！！ (2019年5月20日 1時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
よつぎ(プロフ) - いつも、楽しみに読ませてもらってます！Part7でも、更新頑張って下さい！応援しています！ (2019年5月20日 0時) (レス) id: 1767016ec7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：eye | 作成日時：2019年5月19日 22時
