Crescends (ページ3)

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姉妹の会話ページ3

その夜、シャワーを浴びてもう一仕事、と欠伸をして携帯を見ると、姉さんから着信二件とラビチャが一通届いていた。

ラビチャを開き、中を確認する。

≪誠に急で申し訳ありませんが、明日会社で寮を使わせて頂く運びとなりました。家に戻って頂けませんか？≫
「そんな…⁉いきなり…⁉」

私は焦って髪を拭いていた手を止め、携帯を握り締めた。姉さんが私にも敬語と使うのは仕事モードの時で、最近になってよく増えている。

姉さんの仕事の話は聞いている。メンバー選考の時に私も相談されたが、姉さんが決めるべきでしょう？と…突き放した。結果、七人の男性アイドルが選ばれたと聞いている。

≪それって、あの七人の事？≫
≪嫌よ。どうして私が後から使う人のためにここを出て行かなくちゃいけないの？私は二部屋しか使ってないから、残りの七つの部屋を使わせて。それじゃ駄目なの？≫

≪部屋数はそれで十分なんだけど…≫
≪縁は七人の男性と同居は嫌じゃないの…？あの人たちは、そんな人じゃないことは分かっているけど……≫

≪ここを出て行かないといけないくらいなら、同居する。部屋に鍵掛かるから大丈夫よ。父さんは私が説得する。≫
≪それに、ここの経費を払っているのは私だよ？≫

≪…縁がそんなに寮に固執する理由が分からないけど……≫

ちくり、と胸が痛んだ。本当はその理由を言いたい。でも言いたくない。少し間があった後、姉さんから言葉が続いた。

≪そこまで言うのなら、分かった。お父さんには私からも話しておくね？≫

その言葉に、私は良かった…と胸を撫で下ろした。

≪ありがとう。姉さん≫

≪ううん、大丈夫。縁も早く寝てね？おやすみ≫
≪おやすみなさい。姉さんも睡眠はしっかり取ってね？≫

そういえば…と、ふと思い出して文を続ける。
≪あと…ライブ、見たよ。姉さんが演出したんだよね？良かった。≫

≪ありがとうございます…！そう言って頂けて嬉しいです…！≫

…良かった、姉さんが喜んでくれて。また仕事口調が出てしまっている。
≪姉さん、仕事口調が出てるよ？私との連絡では使わなくてもいいからね。≫

≪あっ…！ごめん…！つい癖で…！≫

可愛らしい癖に、私は思わず微笑んだ。
≪いいよ、気にしてないから。それじゃ、おやすみなさい≫

≪ありがとう。おやすみ縁≫

私は既読を付けて携帯を閉じた。

「言える訳…無いじゃない……」

少しの沈黙の後顔を伏せそう呟いた―小鳥遊縁は空いている部屋の掃除を静かに始めた。