Crescends (ページ13)

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刑事みたい(大和主観) ページ13

「『Wing Heart…』」

その後も遠くから尾行を続け、ユカはとある三階建ての雑居ビルの階段を上って行った。

ユカが見えなくなってその建物に近づくと、雑居ビルの一階はライブハウスのようで、入り口に「Rock lock!!」との看板と共に個性的な装飾が施され、一見さんではなかなか入りづらい雰囲気だ。

二階は二階で窓ガラスに「コスプレ衣装専門店撮影も出来ます！」との謳い文句と共に、真ん中に大きく『Wing Heart』との店名が書かれていた。

ああいうのが好きそうなナギは喜んで入るだろうが、流石のリクやミツも入る勇気はなかったようだ。

勿論俺も無い。

「どうしましょう…」

と悲しそうな目で見上げるリクに、辺りを見回して提案する。

「ほら、あそこに店があるだろ？あそこならここの入り口も見えるし、少し待ってみるか？」

指を差す先は昼時を過ぎて多少空いていそうなファミレス。

「大和さんナイス！」

とミツが笑顔になるとリクも笑顔になり「早速行きましょう！」とうきうきと駆けて行った。

一体いつユカが出て来るのか、そういえば見当もしていなかった。

ドリンクバーで二時間粘り、小腹が空いたと頼んだパフェも(主にリクとミツが)完食し、数えるのが面倒になってしまった珈琲を、ちびちび飲みながら考える。

本当にユカは危ないことはしていないのか、と。
さっきの表情…「申し訳なさ」というのは、大抵自分に非があってこそ湧き出る感情だ。自分に非があることの「申し訳なさ」、それを隠していることへの「申し訳なさ」。

似た思いを持ち、それが分かるからこそ、考えれば考える程、不安になった。

あの二つの店名をネットで検索して見てみても、怪しい所は特に無く至って普通の(まぁ個性的ではあったが)ホームページに飛んだだけだった。

次第に焦燥感に駆られる俺を見向きもせず、呑気にミツがスマホを取り出しイヤホンを付けた。隣に座るリクも興味が其方に向き、ミツのイヤホンの片方を貸してもらいながら二人でスマホを見ていた。

…お兄さん寂しい。

堪らずとんとん、と机を叩き「何見てんの？」と問い掛けた。

「最近話題のラビチューバ―の動画！大和さんも見る？」

ミツは三人が見られるようにスマホをテーブルに置き、俺はミツが差し出すイヤホンを受け取って、画面を覗き込んだ。