Crescends (ページ12)

今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:3,494 hit

そりゃそうだよな(大和主観) ページ12

「どうして跡をつけているんですか？」
「うわぁぁぁ⁉」

角を曲がるとそこには、腕を組み仁王立ちをするユカが居た。

思わず後退る俺達に、彼女は訝しげな眼を向けた。

「それで、どうして、私を、尾行していたんですか？」

その声には苛立ちの色が全面に出ていて、表情とも相まってある種の凄みを感じさせた。

「えーっと…さ、散歩だよ！たまたま小鳥遊さんと会うなんて…奇遇だね！」
「は？ばれていないとでも？」
「ぅ…ごめんなさい…」

リクの抵抗も、ユカに睨まれると一瞬で散った。

「私は忙しいんです。手短にお願いします」

明らかに不機嫌なユカを前にしょんぼり怯えているリク助け船を出す。

「えーっと、縁チャンはどんなお仕事してるのかなーって。ほら、そんなデカいバッグ持ってさ？仕事なんて言われたら何の仕事してるのか気になるのは人として当然だろ？」

「だからって…人をストーキングするのは…人として間違っている気もしますが…」

ユカの言葉に俺は核心を突かれぐ、と喉を詰まらせた。

「ほら！小鳥遊さんが何か危ない仕事してるんじゃないかって…オレらもマネージャーも心配してるんだよ！」

今度はミツが声を上げた。

するとユカは一瞬申し訳なさそうな表情をするも、「その心配はありませんから、もう帰って下さい。警察に通報しますよ？」と俺らを脅した。

流石にその言葉を出されると引くしかない。リクとミツの方を向くと、二人とも諦めている表情だった。

「ほら行くぞ？」

ぽん、と肩を叩くと二人はしょんぼりとユカに背を向けた。

「18頃に帰りますので。…すみません」

二人は見えていないだろうが俺は、顔を伏せ、正真正銘心から謝っているユカを見た。

申し訳なさ、が全面に出ている。

「待ってるから」

と告げるとユカはいつもの愛想笑いをして、此方に背を向けて歩き出した。

「ほら行くぞお前らー」

二人に寮に帰ろうと声を掛けると、二人してきらきらとした大きな瞳で俺を見上げた。

あ、これ諦めてねぇわ。

「あそこまで隠されたら逆に気になるよな!?」
「だよねっ！ほら行きましょう！大和さんも！」

もっと上手に尾行しましょう！と俺の服を引っ張りながら言うリクに、しょうがねえなーと言いながら俺も結局引っ張られていた。

自分の秘密は絶対言えないけれど、人の秘密を暴くのって…やっぱり、楽しいんだよな。