【銀魂】ふわふわな君を。part2・。*

５２話　お返し ページ6

銀時side


「…」

『ねえ、ちょっと』

「なっなんだよ！！」

『何にそんな驚いてるのよ…』


バクバクと心臓が五月蠅い。
汗も止まらない。俺もう死ぬんじゃねェか？
そう思っていると、急に肩をポンと叩かれ、声を掛けられた。
かなりビビりながら振り向くと、呆れたような顔をするAが居た。


「別に…。で、なんだよ」

『なんかよく解らないけど、私総悟に呼ばれてるの。
だから、ちょっと出てくる』

「だっ…ダメだ！！」

『どうしてよ』


じっと見つめられ、なんとなく目を逸らした。
こんなんで照れるなんざ餓鬼じゃねェか…。
ドＳ野郎に呼ばれてるから出ると言うAの手首を掴んだ。
どうしてって…それはあまり言いたくない。


「お前、今日何の日か知ってるか」

『誰かの誕生日か何か？』

「バッカおめー…ホワイトデー、だろうが」


そう、今日はホワイトデーだ。
俺が落ちつけないのも、それの所為。
にっぶいAに言うのも、何でか恥ずかしかった。


『ああ、成る程ね。総悟はお返しをくれるってことか』

「だから、行くな」

『何でよ。お返し貰った方が得じゃない』


まったく鈍い。鈍すぎる。だからコイツは困るのだ。
貰った方が得、確かにそうだけれど、アイツの元には…。


「だとしても…今日、今日だけは、俺の傍にだけ居てくれよ」

『なっ、にを、言って…！』


掴んだ手首を壁に押し付け、なんとか目を見て言いきった。
よし、なんとか言えた。
なんて満足していると、Aの顔は面白いくらい紅くなった。
こういう反応をされるから、つい甘い言葉をはきたくなってしまうのだ。
片方の手で紅い顔を隠そうとしたから、そっちも掴んで阻止をした。


『はっ、離しなさいよ』

「ダメだ。離したらお前は他の野郎のとこへ行っちまう」

『いかな―…んぅ』

「もうお前うるせーから黙っとけ」


離してほしいなら、そんな可愛い反応するなよ。
そういう意味も込めてAの両手首を片手で押し付けてから、俺は懐からホワイトデーのお返しを出して片手で器用に箱を開け、チョコを無理やり口に入れた。


「―俺からお返し、喰っちまったから今日は俺と居ろ」

『〜〜っ私はアンタのものじゃ、ないんだからね…』


Aの熱で溶けて指についたチョコを、ぺろりと舐める。
意味不明な理由を口にすると、コイツは俺の手をバッと振りほどいてから口を拭い、潤んだ目でキッと睨んで耳まで赤い顔で、そう言ったのだった。

―甘い甘い菓子だ。

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