間接キス ページ6
｢どうしたの、伊野ちゃん｣
目が合った男性に
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不思議そうに声をかけていた
｢いや、なんでもない｣
そう答えるとぱっと視線を外された
｢…ごめんね、｣
山田さんにそう言われ
頭を横にぶんぶんふる
｢こいつら、俺の友達で｣
そんな気がした、
そうじゃないとおかしいもん
｢…あ！俺、有岡大貴っていいます！｣
後ろにいた男性はにこやかに自己紹介を始め
その隣にいる男性は少しだるそうに注文し始めた
｢もー、伊野ちゃん、！自己紹介しないと！｣
有岡さんが伊野ちゃんと呼ばれる男性に
笑いながら話しかけると
｢あー、俺は伊野尾慧っていいます｣
ふにゃと笑って自己紹介した。
｢…佐藤、Aです｣
控えめに小さな声でわたしも自己紹介を返す
｢Aちゃんはいつからここに通ってんの？｣
有岡さんはすごく気さくな方で
初めましてなのにもう下の名前で呼ばれても
違和感がないほどむしろそっちの方が
心地いいと感じるほど
人懐っこい雰囲気を醸し出していた
｢…き、きのうです｣
｢え！通い始めたばっか？！｣
｢や、通い始めたわけでは…っ｣
｢んだよ、山田〜！通い始めたばっかのお客さんを口説くだなんてお前いつからそんなチャラ男になったんだよー！｣
｢だーかーら！口説いてないって何回言えばわかんだよっ｣
2人がそう言い合いを始めると
伊野尾さんがわたしの正面に移動した
｢…？！｣
｢…あの二人言い合い始めたらしばらく続くから｣
どんな感情なのか全く読めないような表情で
にっこりと微笑んだ
｢…ねぇ｣
｢は、はい？｣
｢…これ、1口もらっていい？｣
伊野尾さんが指さしたのは
さっき山田さんが持ってきてくれた
甘いピーチレディ
｢ひ、ひとくち？｣
｢めっちゃ甘い匂いして美味しそう｣
｢や、でも、｣
ひとくちって、
あ、あれ？
私考えすぎ？
なんでそんな平然とした顔で
そんなこと言えるの？
ひとくちもらうって、
か、間接キスするよね…？
やっぱ私考えすぎ？
｢…だめ？｣
こてん、と首を傾げる伊野尾さんは
ずるいほどにかわいらしくて
｢…ひ、ひとくちならっ｣
何故だか断れなかった
｢…やった、｣
少し勝ち誇ったような顔をして
彼はわたしのピーチレディのグラスを手に持った
｢…っ、、、｣
やっぱり
やっぱりそうですよね、
彼の頭には 間接キス という言葉はないのだろうか
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作者名：どろっぷ | 作成日時：2018年7月14日 16時
