極道上等【Ⅰ】 (ページ24)

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【20話・裕太side】ページ24

会場に向かう道のりまで、ずっと窓の外を見つめている(人1)さん。

たまに苦虫を噛んだような顔をしていたが、直

ぐにいつもの凛々しい表情に戻った。

滑らかにパーティー会場に車が停まると、(人

1)さんの隣に座っていた岩さんが素早くおり

て、(人1)さん側のドアを開けると、手を差し

伸べる。

剛「どうぞ、御足元にお気をつけ下さい」

(人1)「ん」

岩さんの腕に細い腕を絡め、ゆっくりと歩き出

した。

その一連の動作だけでも見惚れてしまうのは、

二人の容姿と醸し出す色気だろう。

玲「......」

玲於に限っては、完全なマヌケ面。

(人1)さんは車の中にいる臣さんに笑顔を向け

て俺にとっての未開拓地＿罵詈雑言が飛び交う

戦場に歩を進めた。

.

.

中に入れば、豪華な料理に、化粧の濃い女達、

ゲスイ組長などが俺の目をチカチカさせる。

その中でも、

「...本当にお綺麗だわ...」

「素晴らしい...あんなに美しいとは...」

「実物はもっとお綺麗なのね...」

(人1)さんは周りと比べる事すら恐れ多い存

在。

黒い着物にその白く華奢な身を包み、いつもは

メイクをしない(人1)さんも、今日は上品な化

粧を施している。

左に流された傷みを知らない髪は、歩く度にい

い香りを放つ。

(人1)さんと同格になろうなど、俺達の怒りを

買うのと同じ事。

暫く(人1)さんに見惚れていると、着物姿で走

ってくる長身の女が。

ア「(人1)さん！お久しぶりです！今日は広行

様はいないんですね？」

そこそこの権力を持つ中島組の１人娘である、中島アミ。

俺は彼女を視界に入れつつ、(人1)さん好みの

カクテルを取り、渡す。

嬉しそうにカクテルを口に含みながらキョロキ

ョロと辺りを見始める。

(人1)「遅れてくるって。１人？」

ア「居ますよっ♪挨拶しますか？」

(人1)「ん。お願い」

そう言うと(人1)さんは、岩さんに腰を押され

て奥で酒を煽っているジジイの所に向かった。

しかし、

(人1)「勿論。玲於、何か食べ物取っといて？

裕太は入り口でお父さんが来るのを待って

て？」

ついてこうとする俺達を止めて困ったように目

尻を下げた。

本当は一緒に行きたかったけど、(人1)さんの

お願いともあれば聞かないわけにはいかない。

渋々入り口に歩を戻した。