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「…おじさん、どういうこと？」
ビョンミン伯父さんに呼ばれて訪れたのは、それほど大きくない芸能事務所だった。
目の前には伯父さんと、この事務所・bighitの社長であるパン・シヒョクさん。
そして私はたった今、とんでもないことをこの耳で聞いてしまったのだ。
BM「お前、昔から歌うことが好きだったろう？」
「そうだけどっ」
BM「悪い話じゃないはずだ。」
「…」
どうやら、この事務所に日本語講師が必要になったらしい。
社長とビョンミン伯父さんは古くからの友人で、今度デビューすることになったアイドルのMVで、伯父さんの不動産会社を贔屓にする代わりに日本語の講師を紹介してほしいということになったという。
伯父さんが紹介できる日本語が話せる人なんて私くらいだろう。
何を隠そう、私は日本生まれ日本育ちだからね。
私の父も母も仕事で韓国にはいないし、
伯父さんの人脈は広いけど、こんな大事な話に他人を紹介するなんていう、リスクが高いことはしたくなかったのだろう。
そして、講師として頑張れば、私にも練習生としてレッスンを付けてくれるという。
つまり、デビューも夢ではないということ。
…そんな交換条件みたいにデビューを約束されても、嬉しくないしやる気も起きない。
でも、芸能事務所で働くことで夢の世界を垣間見ることができれば、自分を奮い立たせることもできるかもしれない。
やっぱり、私はまだ
夢を捨て切れていないんだ
PD「Aさん、すぐ返事が欲しいわけじゃない。数日考えて――」
「お引き受けします」
BM「…本当に良いのか？」
「はい。ただ、レッスンは要りません。デビューの約束なども要りません。日本語の講師として働かせていただくだけです。」
PD「…なるほど。道は自分で切り開くってことか。では、その内容で契約しよう。よろしく頼むよ。」
「はい、よろしくお願いいたします。」
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
数日後、私はカフェに休職願を出し、改めてbighitへ赴いて契約書にサインした。
そして、これから私の生徒となる人が居るという部屋に入った時
まさか、と思った。
私のミニライブに来てくれた人
私に、夢を捨てるなと言ってくれた人が、そこにいた。
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作者名：おうさか なち | 作成日時：2016年3月4日 21時
