第二話貴女との出逢い ページ3
妖『今宵は朔の日!!キキキッ好機なことだな、半妖!!!!』
真後ろから雄叫び声が突き刺さるが、どうも人間の姿で血を流しすぎたようだ。思うように、足が前へ出ない。
犬夜叉「くそっ…!」苛立ちに顔を落とす。これだから人間の体は嫌いなんだよ…。弱すぎる。
後方から風を切る気配がし、一瞬で鋭いものが振り下ろされるのだと察知した刹那。
「やめてっ!!!」
鋭い鈴の音に反射的に顔を上げると、涙を流しながら必死に俺の方へと手を伸ばす女の姿が見えた。
知らない女。なんで泣いてんだ。
犬夜叉「チッ面倒くせぇな!」地面を蹴り、俺は女の伸ばされた手を取り引き寄せ横抱きにする。空いた片方の手で自身の肩傷を握り、振り向き様に絞り出した血を妖怪の顔目掛け飛ばす。
「っ!!!」
腕の中に居る女は傷口を見て、白い顔を更に悪くさせた。
妖『ギェーーー!!!』鋭い鎌で顔を覆い、見当違いの場所に乱雑に鎌を振り下ろす妖。
その隙に俺は女を抱え、桜の木の後ろに身を隠す。恐怖からか、彼女の呼吸は早く温かい吐息が俺の首元に当たる。抱いた肩が微かに震え、それを無理やり止めるかのように胸元に置いた細い手が火鼠の衣を握り締める。
妖を睨みつけながら、俺はそれを感じていた。
暫くすると妖は、匂いも目視も感じることが出来ないのか自分たちの目の前から去っていった。
犬夜叉「やっと行ったか。執拗い野郎だぜ…。」臨戦態勢にあった体から力が抜け、その場に座り込んだ。
…。犬夜叉「おい。」
いつまで経っても顔を上げない女に、俺は痺れを切らし声をかける。
「もう、いませんか?」
犬夜叉「いねぇよ。顔上げろよ。」
俺の声に頷くと、女は静かに顔を上げ肩越しに妖がいないことを見る。すると安心したのか、静かな笑みを浮かべ真正面に目が合い…。
「本当ですね…。」柔らかい声。
特別に器量良しではないが、雨や涙に打たれ負けない儚げな美しさがそこにはあった。
犬夜叉「…。そうだろ。」
俺は自然と、彼女の頬に手を伸ばした…。
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作者名:sakura50050710 | 作成日時:2021年12月6日 22時