忍ぶ恋 (ページ1)

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第一話貴方との出逢いページ1

時は戦国時代。内乱が尽きない日々、心休まる日など一時としてない。この村は桔梗様という巫女が守ってくださっているので安心だが、他の村は妖にさえも襲われていると聞く。

咲子｢寒い…。雨、早くやまないかな。｣
卯月になっても、雨が降れば寒い。散りかけた桜の木の下で雨宿りする一人の少女。洗濯桶を小脇に抱え、自分の右手に息を吹きかけ少しの温かさを求める。しかし、少女の願いも虚しく雨は勢いを増す。

咲子｢堪忍して…。帰れないよ、こんなに降ってきたら。暗くなってきてしもうたし。｣少女は月が隠れた空を仰ぎ、顔をしかめる。暗闇は嫌だ。でも、もっと嫌なものがある…。

キィーーー！！突然人ではない金切り声が耳を突く。
ドン！と少し彼方にある大木が倒れ白い土埃が舞うのが、目に映る。

！！！大地が大きく揺れるのを感じ、咲子は両耳を塞ぎ木の根元にしゃがみ込む。

咲子(お願い…。来ないで！！！)
妖怪…。それは、咲子の辛い記憶を呼び起こすもの。

金切り声は間隔をおいて鳴き続けており、大地の震えと共にどんどん近くなってくる。

｢くそっ！！！！｣
少年のような声が聞こえた気がして、咲子はすぐさま顔を上げる。
咲子(誰か襲われてるのっ？)
大きく開かれた咲子の目には、巨大なカマキリのような妖怪が映り込み振り上げられた鋭い鎌の先には長い黒髪の少年が居た。
血が滴る左腕を押さえ片膝をつくその様は、鎌の格好の餌食だった。

！！！

咲子は少年だけを見据え駆け出し、顔に痛いほどの激しい雨が叩くなか、手を伸ばした…。