黒の皇帝 (ページ27)

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トリトマページ27

───嶺亜side

辺りが暗くなり、気温も下がる。

はあ、と息を吐くと白くなって寒さを実感した。

待ち合わせの時間まではまだ20分くらいある。

けれど逸る気持ちを抑えられなくて集合場所に来てしまった。

『嶺亜』

肩で息をする疾風が俺の視界いっぱいに映る。

イルミネーションよりもキラキラしていて、目がチカチカするような錯覚に陥る。

『ごめん、待たせたよね』

嶺亜「んーん、俺が早く来すぎただけだよ」

『でもほっぺ冷たくなってる』

大きな手が俺の頬を包んだ。

じーんと温かくなり、自然と笑みが溢れる。

嶺亜「頑張って仕事巻いてきたの？」

『うん。早く嶺亜に会いたかったから』

そう言って巻いていたマフラーを俺に巻き、深めに被っていたボアのバケハも被せられる。

『寒いのに待っててくれてありがと』

へら、と笑う疾風に好きが溢れてしまいそうだ。

疾風が俺だけを見てくれればいいのに、って思うのは相当なんだろうな。

嶺亜「変装の意味なくなったじゃん」

『だってお前寒そうなんだもん』

気休め程度にしかならないだろうけど掛けていた伊達メガネを疾風に掛けてやる。

15cmくらいの身長差があるせいで背伸びしなくちゃいけないのが癪だけど。

嶺亜「ん、似合うんじゃない？」

『かっこいい？』

嶺亜「うんうん、かっこいい、かっこいい」

オンもオフも俺にとって疾風が1番かっこいい。

かっこよすぎて目が潰れそうだよ。

『嶺亜は可愛いね』

そのひとことがどれだけ嬉しいかわかってないでしょ。

お前にそう言ってもらいたいからどれだけ頑張ってるか、知らないでしょ？

嶺亜「お前の可愛いってなんか安っぽいから嫌」

『嶺亜への可愛いは超特別なんだけど。俺の中で最大級の可愛いなんだよ』

嶺亜「はあ……」

そんなこと、安易に言わない方がいいよ。