紅の女王Ⅲ (ページ15)

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『思ってたより滑れる！』

すぃーっと補助無しに滑りながら、鼻歌を歌ってみたりする。

私達のオフとずきうやのオフが見事に重なって、小規模な屋内施設を貸し切ってローラー教室を開催している。

危ないからと蒼弥くんに長袖長ズボンを指定され、心配性な彼から肘膝のサポーターとヘルメットを付けられた。

『私結構すごくない？』

猪狩「天才！！」

ニコニコな蒼弥くんが褒めちぎってくれる。

井上「離すよ？」

りせ「ダメ！絶対離さないで！」

井上「大丈夫だって」

りせ「瑞稀くんがいないと無理なの〜！」

りせが産まれたての子鹿みたいに足をプルプルさせてみじゅくんの腕にしがみついていた。

『…みんな知らないけどりせって運動神経悪いのよね』

猪狩「今日知ったわ」

『あの子、球技も出来ないから体育休んでたのよ』

猪狩「まあ、ヴァンパイアだし日光に晒されるのは良くないしね！」

ヴァンパイアキャラを貫こうにも最近は日中の外ロケやドラマなどの撮影もあって、太陽の下で活動してるから無理があるんだけども。

『今度きょもゆりで運動勝負の企画させたい』

猪狩「うっわ、絶対おもしろいやつ！りせもストラックアウト出来なさそう」

『ふはっ、絶対出来ない！』

ベンチで休憩している蒼弥くんの隣に座って、苦戦中のみじゅゆりを眺める。

なんか、

猪狩「青春みたいじゃね？」

『私もそう言おうと思ってた！』

私達が経験出来なかった青春の1ページのような。

役としての経験はあるものの、紅谷羽月も、きっと蒼弥くんも、りせもみじゅくんも経験したことはない爽やかな、なんてことのない日常。

猪狩「ね、羽月」

蒼弥くんの大きな手が私の手を包んだ。

猪狩「今度、2人きりでデートしてくれませんか？」

いつになく真剣で熱を帯びた眼差しを向けられて、柄にもなくきゅんとしたのは内緒。