sound (ページ47)

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　カバンをもってトイレに行く。カバンをもって、というのを見て不思議に思われたかな。でも多分ジェシーはツッコんでは来ないだろう。

　トイレの水道の前でカバンの中からポーチを水を出す。さらにポーチの中を漁ってクスリを出す。いや、喉おかしいからね。

　ジェシーとの話が盛り上がるし、彼の陽気につられて私のテンションも上がってしまっているから気付かぬうちに喉に負担をかけてしまっている。…元々痛かったから持ってきていたけど、正解だったな。

　「…よし。」

　クスリをのんで気合を入れる。気付かれぬ程度に声を抑えて、でも今までの雰囲気を気付かないように。…彼自身楽しい人だから、大丈夫なはず。

　「おまたせ」

　席に戻れば携帯をいじっていた顔をすぐに上げ柔らかい笑顔で「おかえり」と言ってくれる。つられるように私の顔も少し緩む。

　そのまま会計をして二人で店を出た。もうすっかり暗くなった空。家が近所な私たちは同じ方向に帰る。なんだか不思議な感じ。

ジ「もうちょっと早く帰るつもりだったけど暗くなっちゃったねー」

　日の長い時期なのにもう真っ暗。それくらい一緒にいたんだと思うと余計に不思議な気持ちになる。

ジ「帰りも待ち合わせた場所まで送るからね」
　「悪いって…」
ジ「昨日も言ったけどあっち暗いから心配なの。しかも言わないと当たり前のように一人で帰るもんだと思うでしょ、Aって」
　「…そうだね、コンビニで別れると思ってた」
ジ「やっぱり。予告してよかった」

　「HEHEッ」と彼特有のアメリカンな、でも少し控えめな笑いが聞こえる。送ってくれる、というやりとりの中で昨日の発言を思い出して急に緊張してしまう。

　「ちょっとでも早く会いたい」…深い意味はないはずなのに、妙に緊張する。漫画みたいなセリフだもん。しかもジェシーが言うっていうのが雰囲気があっている。だからだよな。

　今日を思い返しても何か別な感情があるとは思えなかったし、気にする必要はない。それでも妙に緊張してしまっているのは仕方ないということにしておこう。

　コンビニを通り過ぎるくらいまで、ジェシーのトークが止まらなかった。今日の感想、ライブの感想、普段のみんなの事。

　たくさん話してくれるおかげで私の声を出す量は少なくて済んでいる。これはジェシーが分かっていてやってることなのか、それともただ帰り際のテンションなのか、まだ私にはわからなかった。