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　「ねぇ、あのさ」

　そう口に出した途端に届いたご飯。「ありがとうございます」と言いながら二人で受け取って、「いただきます」と挨拶をしてご飯を食べ始める。

ジ「食べる？」

　スッと差し出されたお皿。中にはパスタ。しかもトマト系の。好きなんだよな。でも、さっきタバスコかけてたような…。

　「タバスコってかけたりした？」
ジ「あ、かけちゃった。嫌いだった？」
　「あー…好き、なんだけど…喉おかしいし、やめとく」
ジ「あ、そっか。辛いのあんまりよくないか」
　「なんかごめんね。ジェシーこっち食べる？」

　私のドリアを差し出せばちょっとだけ掬って食べるジェシー。おいしい！なんてキラキラ目を輝かせててなんか、こっちまで楽しくなる。ある意味不思議な人。

ジ「そう言えばさっき何か言いかけた？」
　「ん？…あ、そうだ」

　ご飯が来たことで忘れてた。口の中のものを一回のみ込んで、聞こうとしてたことを口に出す。

　「こーちさんってさ、どんな人？」
ジ「こーち？」
　「そ。こーちさん。あの日とすごく優しいから、ジェシーとかの前ではどうなのかなって」

　「ん－…」なんて考えてる隙に口に入れる。暑さに耐えながら食べてる間にジェシーはじっくり考えてる。そんなじっくり考える感じなの？

ジ「俺らにもめーちゃくちゃ優しいよ。文句とか言いながら何だかんだ手を差し伸べてくれる、みたいな？」
　「あー…なんかわかるかも」
ジ「怒る時は怒ってくれる感じ？お母さんみたいな？」
　「お母さんみたいかー…なるほどね」
ジ「名の通りって感じ？」
　「名の通り？」

　ジェシーが考えて言ってくれたこーちさんのめちゃくちゃわかるなーなんて思っていれば急に「名の通り」なんて言うから疑問符が浮かんでしまう。名の通りと言われても、私こーちさんの名前知らない…。

ジ「んっとねー…こう書くんだよ」

　ナプキンにテーブルの上にあったボールペンを使って名前を書いていく。途中わかんなくなっちゃったのか携帯を開いて確認しながら。

　サラサラとかかれるそれを眺める。

　「高地優吾…」
ジ「そうそう。優しいって入ってるでしょ？」
　「本当だ…」

　男の子らしい字で書かれたそれ。確かに「優」という字が彼にぴったりで、「名の通り」というのは本当だ、と思う。