sound (ページ30)

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ジ「なーんで笑うのー」
　「だろうなって、思って。昨日私があった時点で酔ってたじゃないですか。その上のみに言ったら、そうだよなって」
ジ「恥ずかしいなー…」

　いつも通り人のいない店内。話してたって誰にも文句は言われない。まぁ、印象はどうかとかは置いておいて。

　「…まぁ、私も、なんで」
ジ「え？」
　「二日酔い。あの後反省会兼打ち上げみたいなこと、して、それで…」
ジ「一緒じゃん」

　「HEHEッ」と力なく笑う。笑い方は一緒なのに、本当に力がこもってないというか…声も小さいから別な人のよう。

ジ「偉いねー、二日酔いだし、昨日ライブだったのに、働いて」
　「…っ！…シフト、入ってたんで」
ジ「そっかー。頑張ってね」

　さっき、お客さんに文句を言われたばかりのところに「偉いね」なんて笑いながら言われてしまってぐっと来てしまう。

　ライブの後だとか、二日酔いだとか。今日シフトが入ってたのは前からわかってたんだから理由にはできないのは分かっていた。でも、それを知ってる人にもらう誉め言葉のようなものに揺らいでしまうのはしょうがないだろう。

　やっぱりこの人はこーちさんの友だちだ。すごく優しい人なんだろう。類は友を呼ぶ、ってやつ。

ジ「Aちゃん、今日何時までなの？」
　「え…っと、あと30分くらい…」
ジ「夜だし、暗いし…心配だから、送っていくよ。ここら辺に住んでるの、高地から聞いちゃった」
　「暗いのくらい、慣れたんで。大丈夫ですよ」

　暗いからって送るなんて言ってくれるのも優しさだよな。二日酔いなのに、気遣い？かすごい。

　「それに、ジェシーさん、二日酔いで具合悪いんでしょ？はやう帰って寝て、なおしてください」

　ピッタリ出されたお金をレジにしまい、レシートと商品の入った袋を手渡しながら言う。そうすれば少し寂しそうな顔をしたジェシーさん。

ジ「…わかった。Aちゃんも、早く治してね。声も、二日酔いも」
　「終わったらすぐ寝ます。そしたら数日で声まで治るはずなんで」
ジ「ん。お大事にね」
　「ジェシーさんも。ありがとうございました」

　あっさり引いて、ヒラヒラと手を振りながら去っていくジェシーさんに優しさへの感謝の意味とあいさつの意味を込めた「ありがとうございました」と言う。

　彼の姿が見えなくなった途端に喉がギュっと閉まって少し激し目にせき込んでしまう。…こんな声とのどの状態でしゃべりすぎたかな。