sound (ページ29)

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　最悪な気分のまま何とか接客や掃除をやっていく。時計を見てもそんなに時間が進んでいないのは納得がいかない。もう本当に早く終わってくれ。

　何度目かのため息をついた瞬間に、軽快な入店音が聞こえる。それさえも腹立つ。…なんて思いながら聞こえないだろうけども出来るだけの声を出して「いらっちゃいませ」と言う。

　ほうきを片付けて、レジまで行く。急いではいけないからゆっくりと。

　レジについて、対応する準備をしながら顔を上げると、もう目の前に人。しかもデカい。

　「…あれ？」

　顔を確認するのと同時にお客さんの方から声がする。その人の声も少しカサッとしてたけど、聞き覚えのある声。このサイズ感と声、そして何よりも顔。

　「ジェシーさん…？」
ジ「昨日ぶりー…やっとバイトの時当たったー…」

　そういえば近所だって言ってたな、と思うと同時にいつもと違う雰囲気に首が傾げられる。知ってるジェシーさんは元気で声も大きくて眩しいくらいの笑顔な人。

　なのに今目の前にいる人は声も小さいし笑顔に力がない。声だけなら店内だからかな？とも思うけど、顔にまで力がないから、知り合って日が浅くても少し心配になる。

ジ「Aちゃん、声、大丈夫？なんか、カサカサしてない？」
　「それは、こっちのセリフと言うか…ッ」
ジ「あぁもう、大丈夫？」

　「あなたこそ大丈夫ですか？」と言おうとした途端に喉がつっかえる感じがして咳を堪えるため顔にぎゅっと力がこもってしまう。それを察してまた心配してくれるジェシーさん。申し訳ない。

　「大丈夫、です。慣れてるので…。ジェシーさん、」
ジ「ん－？」
　「なんか、元気ないです？声もいつもと違う、ような…。あ、袋、いりますか？」
ジ「え！？あー…お願いします」
　「はい」

　レジをしながら、話を進める。袋がいるというから、合計金額を伝えてから、商品を袋に入れていく。お金を出しながらジェシーさんが恥ずかしそうに頬を掻いた。

ジ「…二日酔い、なんだよね」
　「…あぁ、なるほど」
ジ「声も、昨日のライブ本当によかったから騒ぎ過ぎたのと、あのあと本当に飲みに行ったからそこでも話しすぎちゃって…」

　確かにあの後飲みに行くって言ってたな…と思い出して少し笑えてしまう。あの時点で結構酔ってたみたいだし、そりゃ二日酔いにもなるよね。