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　「…あ、」
高「あ」
　「…いらっしゃいませー」

　深夜バイト。いつも通り眠気と帰りたさと戦いながらレジにいれば見慣れた姿が入ってきた。思わず「あ」なんて言ってしまったのを誤魔化すように挨拶をすればいつも通りに小さく頭を下げてくれる。

　いつも通りの順番で店の中を回って、スッと私の前に来る。

　「お久しぶりです」
高「そうですね。日、中々被んなかったですね」
　「ですね。…袋、いります？」
高「あー…こっちだけ、袋に入れてほしいです」

　最後に会ったのは…大我を迎えに大学に行ったあの日だし、会うこと自体が久々。その上ここで、っていうのに限定したら…本当に久しい。

　最近はバイト中は楽しみがなかった。対応すれば声が通らずめんどくさいという雰囲気を出され、まれに「声が小さい」と怒られ。

　その中で、たまにでも会って優しさをもらうのが自分のなかでこのバイトを頑張るパワーになっていたと気付いた。だから、久々にこの状況で会えれば嬉しくなってしまう。

高「…ライブ、明日ですね」
　「そうですね。…大丈夫ですか、他の予定とか」
高「バッチリ空けてます！ジェシーも来れるって言ってましたよ」
　「よかった」

　そんなことを話しながらレジ対応を済ませていく。今回はお釣りがないから、後はレシートを返すだけ。

　「レシートのお返しです」
高「ありがとうございます。…今日会えてよかったです」

　「会えてよかった」なんて言われたら嬉しくなってしまう。それと同時に返答にも戸惑っていればこーちさんが続ける。

高「明日、楽しみにしてます、なんて言ったらプレッシャーになる？」
　「いえ。むしろやる気出ます」
高「ならよかった。直接言いたかったから」
　「ありがとうございます」
高「あと、これ」
　「え、」
高「…迷惑、です？」
　「迷惑だなんて…ただ、申し訳なくて」

　言葉だけでもうれしいのに、さっき会計したばかりの袋に入れた方をレジ越しに差し出される。今までこの人に何度か物をもらってるから、その動きが私への物ということをすぐに理解してしまったと同時に申し訳なさを感じた。

高「勝手にやってるだけなんで、気にしないで」
　「…ありがとうございます。」
高「…じゃ、また、明日」
　「ありがとうございました」

　私が袋を受け取るとすぐに帰っていくこーちさん。明日来てもらえるというのを手元にある袋で実感する。

　…明日、頑張ろ。