sound (ページ3)

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　「ケホッ…」

　あー…やっぱりおかしい。いつものことなんだけどさ。

　声が枯れるというか、のどがイガイガするというか私にはよくあること。今日もそう。いつものことでなんでこうなったか、なんて理由も分かってるんだけど。

　こういう日は深夜のバイトが長く感じる。早く終われ、と願うからなのか。何度時計を見ても針が進んでるように見えない。もう早く帰って寝たい。ちゃんと寝て、静かに過ごせばすぐ直るんだから。…あー、早く終わんないかな。

　そう思っていれば外から聞きなれた音が聞こえる。時計を見れば、うん。いつもの時間。

　「…いらっしゃいませ」

　かすれた声を誤魔化すようにいつもよりも小さい声であいさつを言う。「こーちさん」はいつも通りこっちを見て微笑みながら小さく頭を下げる。いつも通りの流れで見て回り、レジにやってくる。

高「お願いします」

　ピッとレジを通しながら喉から出てきそうになる咳をこらえる。…袋、聞かなきゃ。

　「…袋、いりますか？」
高「…袋？」

　声を出すのが億劫で申し訳ないと思いながらも頷きで返す。ごめんなさいね、いつもより声小さくて。しかも掠れてるから聞こえづらくて。

高「あー…お願いします」

　確認してから袋を取り出す。そのタイミングで咳が出てしまう。…困った、止まらない奴。

高「大丈夫ですか？」
　「…すみま、せん。だいじょうぶ、です」

　咳交じりに返す。あー、もう本当に申し訳ない。しかも、こーちさん、心配そうな顔してるから余計なんか、罪悪感？そんな感じ。

　「730円、です」

　咳が落ち着いて金額を伝える。咳直後ということもあって余計声がかすれる。ほんと、この喉の弱いこと。

高「すいません、ちょっと待っててもらってもいいですか？」
　「はい。どうぞ」

　よくあること。買い忘れを思い出して取りに行くとか、そういうのかな、と思い最低限の言葉で返す。こんな人のいないコンビニだし、いくらでも待ちますよ。

高「これもお願いします。袋、別でお願いします」

　やっぱり買い忘れか。と、渡されたものもレジに通す。こーちさんが先に言ってくれたから、もう一枚袋を出して別で入れる。

　「合わせて、」
高「あぁ、大丈夫！喋んなくて大丈夫！」

　画面を確認してお金を渡してくる。喋んなくて大丈夫って…。私が咳してたり声掠れてるから？だとしたら優しすぎない？