sound (ページ13)

今日:16 hit、昨日:36 hit、合計:92,911 hit

13 ページ13

.

　「いない、じゃん」

　ため息が出る。本当に自由人。

　私は今、大我の通う大学の前にいた。数時間後にはバンドで練習をする、ということで、授業のなかった私が大我のお迎え係になった。

　大我に指定された場所に来たのに、そこに本人がいなくて呆れている、という状態。上着を着てきたせいで暑いし、慣れない場所に来たから疲れた。さっさと来てよ。…という願いを込めて大我に連絡をした。

　『ごめん、もう少しかかる。中入って大丈夫だと思うから中で待ってて』

　送られてきた文章を見てまたため息が出る。待ってんのはいいけど、中で待っててって…緊張するじゃん。知らない大学の中なんて。

　…でも、ここで待つのは暑い。だから、勇気を出して中に入った。ちょっとドキドキしたまま足を進める。適当に進んだ先に柔らかそうなベンチを見つけた。ちょうどいいじゃん。

　背負っていたギターを下ろし、そのベンチに座る。日差しもないし本当に丁度いい。座った場所から見える景色の写真を撮り、大我に送っておく。後は終わり次第勝手に見つけてくれ。探せ。

　カバンを開けて持ってきていたパンを食べる。いつ終わるかわかんないしお腹すいたしね。

　パンを食べながら携帯をいじって待っていれば、携帯が震える。確認すれば「どこだよ」の文字。自分の通う大学の中だ。探せ。なんて思い携帯を伏せた。

　「…え！？」
　「…あ、どーも」

　携帯を伏せて置いて、またパンを食べようと顔を上げた瞬間、人と目があった。その人が驚いた声を出すから私が声を出すタイミングを見失ってしまって、すごく冷静な人、みたいな感じで言葉を出してしまった。

高「なんでここに！？」

　そりゃ驚くよな、私達、コンビニと居酒屋でしか出会ったことないもん。それに私がここのせいとじゃないことは知ってるだろうし。

　「大我を迎えに来て…。でも、まだだから中で待ってろって言われて…みたいな」
高「…そう、ですか」
　「そうなんです」

　私の目の前で立ち止まったままの姿勢でいるこーちさん。なんとなく無言の時間が流れてちょっとだけ気まずかったから、私は少し横にずれて空間を作ってそこをポンポンと叩いた。気まずいけど、知らない場所に一人でいるより、知ってる人がいる方が安心する。

　「どーぞ」
高「え、…あ、はい」
　「なんか、行くとこありました？」
高「いや、次は空きなんで…」
　「…なら、いてもらえると助かります」