Wake up (ページ49)

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　そう言って走っていくジェシー。その背中の頼りになる感じは今でもしっかり覚えている。

森「A、A」

　ジェシーに言われた通り、Aを動かさないようにしながら。でも触れていないのは不安で、Aの手を取りながら名前を呼び続けた。ぬくもりはあるし、息をしている様子もある。なのに反応だけがない。見たところ、怪我もあの頭だけ。もしかしたら痣とかはあるかもしれないけど、血の出ているのは多分頭だけ。

　なんで、なんでこうなってる？だって俺、ここに呼び出されただけなんだけど。目の前のこいつに。呼ばれて、何かの話を聞くだけ。それだけだったはずなのに、なんで？

　そんなことを思いながらも名前を呼び続けていれば遠くからバタバタとした足音が聞こえて、ジェシーと、何人かの先生が来た。

　先生が来てからは早かった。その中に保健室の先生もいて、すぐAのそばに来て、声をかけて様子を確かめる。その間に担任によって俺はAのそばから離される。離れるのは、嫌だった。でも、グッと引き離されてしまい、力が入らずその場を離れることになってしまった。他の先生は何か電話をしている。聞こえる内容から救急車を呼んでるのが分かった。

　「お前は大丈夫か？」

　担任にそんなことを言われる。大丈夫か？俺はどこも痛めていないし何かをしたわけでないから大丈夫。…な、はずなのに、うまく言葉が出ない。その代わりに涙があふれた。

森「先生、A、大丈夫？」

　俺の言葉に先生は一瞬悩んだような顔をしてから「大丈夫だ」と言った。嘘を吐くなよ。悩んだ顔したくせに、よくそんなハッキリ言えたな。

ジ「慎太郎、大丈夫だよ。Aだもん。あいつしぶとそうじゃん」

　先生の言葉よりも頼りになる言葉だった。ジェシーの不安そうだけど落ち着いた顔を見ていたら少しだけ、落ち着いた。そうだ、あいつはしぶとい。だから大丈夫。…大丈夫なはず。

　自分の手についたAのそれを見ると大丈夫、と言い切れないのが悔しくて、怖かった。

　その後すぐに来た救急車で運ばれるA。運ばれるAを見ながら後悔が止まらなかった。いつの間にかまた涙が出てしまってた。俺が泣いたってどうしようもないのに。