Wake up (ページ48)

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　もう一歩近づいてみる。…息は、してる。

森「A？…A？」

　何度も何度も呼んでみるけど反応がない。自分で分かるくらいに震えてしまった手で肩を叩いてみる。それにも反応がない。ふと、投げ出された足が目に入る。その近くに滑ったような跡が見えた。

　この雪のせいか、Aが転んでしまったのは。何かの拍子に滑って転んでそのまま…。

　滑って転んで、壁にもたれかかって座っている。…頭は？滑って転んだ拍子に頭を壁にぶつけたりなんてことはないだろうか。だとしたら、最悪だ。

森「ねぇ、どっかぶつけたりしてねぇの？てか、聞こえてる？」

　声をかけながらゆっくりとうつむいたようになっている頭を確認する。見えやすいように、と少し頭を支えるように触れる。その瞬間に手に残った感触と温度。ベタっとついたそれは見なくても分かった。

森「A！！なぁ！！A！！！」

　手に着いたそれとピクリとも反応をしない様子に焦る。焦ってる場合ではないんだろうけど、この場を離れることもできず、混乱した頭のままAの体を揺らしながら名前を呼ぶ。

ジ「なに！？どうした！？」

　なぜかその場に現れたジェシーが俺の声が聞こえたようで焦ったように近寄ってくる。そして俺の視線の先、Aを見て驚いた声を出す。

ジ「どういうこと？なんでこうなってる。なにがあった？」
森「そんなんわかんねぇよ！俺だってみたら、こいつこんなんで……なぁ！A！」
ジ「慎太郎、落ち着いて！」
森「A！」
ジ「慎太郎！」

　肩を掴みながらデカい声で呼ばれてジェシーの方を向かされる。Aから離れたことによって俺の手の平が見えたようで一瞬目を見開いたがすぐにその視線を俺に戻す。

ジ「…何があったの」
森「わ、かんない。先に、俺が、着いたから、…いつもみたいに隠れて待ってたら、悲鳴、聞こえて
、見たら…」
ジ「こうだったの？」
森「女子が、何人か、いて…その子が逃げてって…ここ見たら、Aが、」

　肩を掴まれたまま、まとまりも何もない話をジェシーにする。ジェシーだって不安そうに目を揺らしているくせに、落ち着いたふりをしながら俺の話を聞く。

ジ「なんとなくわかった。…とりあえず、動かさない方がいい。もっと悪化したら悪いし…。俺、先生呼んでくるから、声かけてて。意識戻るかもしれないし」
森「…わかった」
ジ「すぐ戻るから！」