Wake up (ページ46)

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　ニヤニヤ顔のままのジェシーに見送られて教室を出て、体育館裏に向かう。裏、と言われたらここだろう、という場所にAはいなかった。

森「あいつ…待ってるって言ったくせに。」

　あいつの遅刻なんていつも通りか、とその場所で少し待つ。…いや、そのまま待っててもつまらない。と、その場から離れ、曲がり角を曲がってそこで待つことにした。ここの方が校舎から離れてるし、こっちを通ることはないだろう。

　裏の方をのぞきながら隠れて待つ。「ついた」なんて連絡を入れておけば、いないのが分かれば探すだろう。いつものかくれんぼと同じ。いつ来るか分からないAを待つ間、イヤホンと携帯をつないで音楽を聴くことにした。

　イヤホンから流れた曲は偶然にもラブソングだった。甘ったるい歌詞がかっこいい男の人の声で心地よく流れる。

　「叶わないならせめて幸せでいて」
　「俺じゃダメだったの？」
　
　そんな感じのことを言う曲が連続してかかる。…こんなの聞いてたらなんだか寂しくなってしまうじゃないか。もしや、樹のことが好きだ、ということを聞かされるのでは、なんていうことも頭をよぎってしまい、その時にどんな顔をするか、なんてことも考えた。

　曲が終わった区切りの一瞬の静かさの中で、急に人の声が聞こえた気がした。もしや、と思い角から覗いてみてみれば予想通りAがいた。キョロキョロと俺を探す。サッと首を引っ込め、壁に背中を預けてしゃがむ。見つかるまでこのまま隠れていよう。そのタイミングでイヤホンからは激しめのロックが流れた。

　その音楽に乗って待っていた、はずだった。その曲が終わってしまったのだ。…こんなに見つからないことあるか？こんな人気の少ない、しかも、雪が積もっていることもあって隠れる場所なんてほとんどないような場所でこんなに見つからないか？「ついた」と連絡を入れて以来他のことは伝えてないんだから探さない、ということもないだろうに。

　「どこでしょーか」という文章を送ってみた。探せ、という意味がこれで伝わるだろう。

　見つかって、俺の視界にAの顔が写るか、肩かどっかを叩かれて俺が少し驚きながら顔を合わせるか、のどっちかだと思った。

　それは違った。Aに俺が見つかる前に、イヤホンの外から悲鳴が聞こえた。結構な音量で音楽を聴いてたはずだったのに聞こえたそれに驚いて、思わず、曲がり角を飛び出した。