Wake up (ページ30)

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　舟をこぐAを見ていたら俺ももう限界になってきた。…ごめん、先生。

　「森本！」
森「…ん？」
　「森本！！」
森「っはい！」

　夢の世界に行っていたら遠くから名前を呼ばれる。体がビクッと跳ねて反射的に立ち上がる。教卓の方から俺を向いて呆れた顔をする先生。

　「お前授業中に騒いで、寝て…。」

　あーあ、バレちゃった。始まったお説教を立ったまま聞いていれば、机の端っこが叩かれる。方向的にA。チラッとそちらを見れば、ついさっきまで舟をこいでいたくせに楽しそうな、笑いをこらえるような顔をして下を指さす。

森「…やばぁ」

　指さされた方を見ればシャーペンが床に刺さって立ってる。多分俺がビクッとなったときに一緒に下りたんだろう。で、そのまま刺さった感じ。そんなことある？とそれをみて笑いがこみあげてきてしまう。でも、今説教されてるし、笑えない。

　「Aもだぞ！お前ら後で職員室来い！」
　「え！？なんで！」
　「バレてんだからな？お前も寝てたの。しかも今も森本怒られてんのにちょっかいかけて笑って！」

　先生のお説教の矛先がAに変わる。Aが寝てたのも、今のシャーペンを指さしたのも全部バレてることも、それに対するAの反応も面白くて笑いがこらえきれなくなる。口元がにやけるのを手の甲をつねって誤魔化す。

　「とにかく、二人は放課後職員室。分かったか？」
「「はーい」」
　「ったくもう…続きやるぞー」

　やっと終わったお説教。とりあえず席に座ってもう一度床に刺さったシャーペンを見る。マジで奇跡だろ、これ。

森「A、シャーペン貸して」
　「なんで」
森「だって俺のシャーペンそこだもん。」
　「確かに。…はい」
森「ありがと」

　授業終了後に床に刺さったシャーペンの写真を撮った。そして部活前に二人で職員室に向かえば、最近のこと全てをまとめて怒られた。まぁ、二人とも怒られたのを気にしてへこむようなタイプではないのでこんなお説教何回も食らっていた。その時もその中の一回、というだけ。気にしなさ過ぎて、そこもまた怒られたけど。

　いまだに俺の携帯の中にはあの時のシャーペンの写真が残っている。そして、何回もまとめて怒られた分、先生たちが俺らのこと覚えててくれて、お前のこと心配してくれてるんだからな。
　…お前が起きたら先生に会いに行こ。そして「寝すぎ」って怒られよう。その時は一緒に怒られてあげるから。