Wake up (ページ29)

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【授業中】ページ29

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　俺の中でAとの記憶は楽しかったものが圧倒的に多いけど、多分その次は“怒られた”っていう記憶だ。

　親にもよく怒られた。遊びに夢中で門限を過ぎた時、勉強会をするって言って集まったのに全く勉強しないで騒いだ時、寄り道しながら登校して遅刻したことがバレた時などなど…。どれもAと一緒に怒られた。

　その中でも、学校で怒られた、っていうのが一番多かった気がする。

　「森本ー！A！後で職員室来い！」

　このセリフ、何度聞いたことか。

　髪色が派手になりすぎた時、授業中にウトウトしすぎてしまったとき、テストの点数が悪かった時、成績が悪すぎた時、廊下で騒ぎ過ぎた時、遅刻したとき…。まぁ、たくさん。その中でも、なぜかすごく記憶に残ってるのは授業中のあの時。…あの日のちょっと前だから、高校2年生の時か。

　何の運命か、クラスが一緒とか、席が隣とか、そういうのが多かった。その時もそうだった。Aが一番窓際の一番後ろ。で、俺がその隣。天気が良くて日差しがあったかくて、授業どころじゃないくらいの眠気がやってきていた。

　「慎ちゃん」
森「ん－…？」
　「ちょっとみて、これ」

　授業中、こっそりと隣から呼ばれる。何かと思い、眠い目をこすりながらそっちを見ればAの席に広がる作品。…ノートで折り紙始めたな。こいつ。

森「へったくそ」
　「ひど、かわいいじゃん。うちの子たち」
森「絶対俺作った方かわいいからな」

　俺もノートを一枚破って、Aの机の上にいたのと同じ鶴を折る。

森「ほら」
　「変わんないじゃん」
森「そして、これ、しってる？」

　綺麗に折った鶴のしっぽの部分に切れ込みを入れて先っぽを折って足のようにして、腕を伸ばしてAの席に置く。

　「うっわ！きも！」
森「かわいいだろうちの子」
　「え、きもいきもい。感性どうなってんの」
　「おい！そこ二人！授業中だからな！うるさいぞ」
「「…すいませーん」」

　一瞬忘れてたけど授業中だった。Aと顔を見合わせて表情で「怒られたのはお前のせいだ」と伝えあう。Aから返品された脚付きの鶴をいじりながら、ポカポカの陽気の中授業を聞く。…あーダメだ、眠くなる。

　眠気を誤魔化すために静かになったAの姿を盗み見る。ノートと教科書に視線を向けながらも首がコクリコクリと動いている。…だよな。眠くなるよな。