Wake up (ページ15)

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【雷】ページ15

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　あれは、夏休みだった。

　午前中は学校のプールに行って、そのまま友達と遊んで、雨が降ってきたから家に帰ってきて「宿題でもやらなきゃな」とは思いながらもそのやる気が出なくてどんどん強くなる雨を眺めていた。少し経つと遠くの空が光った。

　…あれって雷だよな？

　そう思うと同時にゴロゴロと音が鳴ってより雨が強くなる。次はいつ光るのか、と期待すれば先ほどよりも強い光。

森「お！すげー！！」

　どんどん激しくなる雷は小学生の俺にとってはかっこいいもので、一人、といういつもとは違う感じも相まってテンションが上がる。光と音が近くなってきた頃、ふと思い出す。

森「Aって雷苦手じゃなかったっけ」

　いつも雷が鳴ると耳をふさいでうずくまるA。…あいつん家、親いるよな？親いることが多いから俺あいつのとこ行くこと多いんだし。大丈夫なはず。

　自分にそう言い聞かせて、少しの心配を残しながらもまた窓の外を見れば光ったと同時にバリバリッ！という音がした。今の落ちただろ、近くに。子どもながらに大丈夫かな、と思っていればいえので固定電話が鳴る。その音に驚きながらもその電話に出る。

森「もしもし、森本です」

　親のまねごとのように電話に出れば相手の方は無言。…これ、いわゆる無言電話ってやつ？

森「あの、切りますよー？」
　「ちがっ…まって、」

　俺の言葉に焦ったように返ってくる声。

森「…あ、A？」
　「慎ちゃん、あのね…」
森「え、A泣いてんの？」

　話す言葉の合間にグスグスという鼻をすするような音が聞こえて聞けば「ん」と弱々しく、そして短く返答がある。

森「お母さんは？いないの？」
　「しごと…」
森「一人ってこと？」
　「ん、」
森「…大丈夫？雷、嫌いじゃん」
　「だからでんわした、すこしだけはなしたい」

　泣いてるのもあってかたどたどしい、子どもみたいな話し方をする。小学生ながらにそれを聞いてると心配になる、というか、守らなきゃいけないような、そんな感じがした。

森「今からそっち行く」
　「…え！？だいじょうぶだから、でんわしてれば！」
森「いいから、行くから！」
　「でも、あめだし、かみなり…」

　遠慮を続けるAの言葉を遮るように外で雷が鳴る。それを聞けば電話のむこうで「ひっ…」と小さく声を上げる。外に出るのは少し怖いけど、今の声を聴いてたら余計に行かなきゃ、という気持ちが強くなった。