Wake up (ページ1)

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『いつまで寝てんだ』ページ1

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　定時で仕事を終わらせて、先輩に引き留められるのを出来るだけうまくかわして会社を出る。なんてったって今日は急いでるから。

　降る雪を一瞥し、足元に細心の注意を払いながら目的地に向かう。

　インターホンを押してからドアを開ける。元々来ることは伝えていたし、いつものことだし。「おじゃましまーす」なんて軽く言いながら階段を上る。背中に少し冷たい、悲しい感じの視線を向けられていることは気にしない。どうせ今日で最後だし。

　階段を上って一番奥にある部屋。ノックだけして躊躇も何もなくドアを開ける。シンッとした片付けられている、というよりも物の少ない…いや、物の減った部屋。窓際にあるベットにはふくらみがある。まっすぐそこに向かい、横に置いてある椅子に腰かける。

森「まだ寝てんの？」

　声をかけても返事は返ってこない。だって寝てんだもん。こいつ。今日でピッタリ7年も。

　7年前の今日。あることがきっかけで目を覚まさなくなってしまったこいつのもとにずっと、少なくても週に一回は必ず来ていた。いつ目を覚ましてもいいように準備をしながら。

　こいつ、Aは気づけばいつも近くにいた。いわゆる幼馴染。一緒に居た時間は長かったし、その中での思い出もとても多い。色々あった。一緒に居て面白かった。でも、それは突然更新されることがなくなった。7年も寝たまま目を覚まさない。

　だから、今日で終わりにすると決めていた。7年ピッタリ。ちょうどいいじゃん。

森「俺、もう来ないつもりなんだけど。そんなに俺と話したくない？」

　呟いても返事はない。当たり前、分かってる。

　いつもなら返事なんかなくても、最近会ったことを勝手に話して、話し終えたら「また来る」なんて言い残して帰る。でも、今日は返事を待ってしまう。返事をしやすいように全て疑問文で話してしまう。

森「今日さ、雪降ってんの。今、Aが起きたらドラマみたいだと思わね？お前、ベタなの好きだったし、ちょうどいいだろ？」

　…。

森「最後くらいさ、いろんな話させてよ。思い出話ってやつ。返事しない限り、恥ずかしがろうがなんだろうが、やめないからな？」

　寝顔を見ていた視線を上げる。窓の外ではまだ雪が降っていた。

　