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 「…案外子供なのな」



 その言葉がいい意味ではないのはすぐに分かった。「子どもっぽくてかわいい」とかじゃない。「子どもっぽくて引く」そういうことでしょ?


 松村北斗にあげたのと同じチョコを隼人にもおすそ分けした。部活で疲れてるだろうし糖分補給?に。松村北斗があんなに楽しんでくれたから隼人だって面白がってくれて楽しく帰れるんじゃないかって、少し調子に乗ってたのかもしれない。



 「あー…でも、パチパチ感が良くない?」
 「よくねぇよ。なんかいつまでも口痛ってぇし」
 「…喜んでくれたのに」



 機嫌悪そうに水を飲んで口の中をリセットしようとしている隼人を横目に、目をパチクリさせて口の中の感覚を単身でいた松村北斗を思い出す。


 それが、口に出てしまってた、ようだ。



 「誰が」
 「…え?」
 「喜んでたって誰が。男?」
 「……んなわけ」
 「今の間なに」
 「間なんてなかったよ」


 パチパチのチョコ、プラスで余計なことを言ってしまったから。分かりやすくイライラを隠さない隼人にひるんでしまうけど、ここで「怒ってる?」なんて聞くと余計に怒らせるからいつも通りを心掛ける。こわいけど。



 「クラスの奴?」
 「クラスは違うよ」
 「…本当に男じゃない?」
 「違うって。男の子の喋る人少ないの知ってるでしょ?」
 「…だよな」



 その少ないのも誰のせいで?っていう話ではあるんだけどね。



 「心配してるだけ、なんだって」
 「分かってるよ」



 髪の毛降ろしてなきゃいけないのも、服装決められてるのも、喋っていい男の子が限られてるのも、毎日一緒に帰ってるのも。ぜーんぶ彼からの好意のためって分かってる。



 「分かってるから、そんな疑わないで」



 イラついてた雰囲気はどこへやら。眉を下げて不安そうな顔をするほどの心配を全面に出してくれる彼をかわいいと思ってしまう。大丈夫。そう思うってことは、まだ私も彼が好き。どれだけ自分を抑え込まれても。



 「…Aも態度で示してよ」
 「……うん」



 態度で示さなきゃ隼人は信じてくれないもんね。

 「隼人も、示してね」って言いたいけどそれを言ったところで「は?俺の気持ち伝わってないの?」みたいなことは目に見えてるから飲み込む。


 隼人がいくら女の子と話そうとも髪型を自由に変えようとも…私がしたら浮気と言われるようなことをしようとも。私はグッと飲み込むしかできない。

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作者名:天羽 | 作成日時:2023年6月18日 16時

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