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「まぁ、そんな頭をたくさん働かせているあなたにはこれをあげよう」
私のヒヤッとした感じも、なんとなく嫌なこの雰囲気も誤魔化すようにカバンを漁り小さな包みを一つ取り出して松村北斗の前に置く。
北「…なにこれ」
「チョコ。糖分あげる」
北「どうも」
「食べてみ?」
北「今?」
「今」
北「…」
なんでよ。みたいな視線を私に向けながらもピリッと包みを開ける。中身を取り出してまた私を見るから頷いて見せればポイッと口の中に放り込む。
北「…っ!?」
「どう?おいしい?」
あまりにも反応があったから面白くて吹き出しそうになるのを堪えて感想を聞いてみれば、少し味わって飲み込んだ後、目をまん丸くして私の方を見る。
北「なに、これ」
「チョコだって」
北「すごいパチパチしたけど」
「そういうやつなの。面白いでしょ?味もまずいわけじゃないし」
北「こういうのもあるのね」
…なんか、機嫌よくない?「変なもん食べさせないで」みたいな雰囲気になることも覚悟してたけど、なんとなーく雰囲気がいい。いつもの「しつこい」と思ってそうな時の機嫌悪い感じとは真逆。
今もまだ少し残ってる口のパチパチ感を感じているのか口元に手を当てて目をパチクリしてる。…なんというか、かわいい?
「もう一個いる?」
北「…」
「素直になんな?」
もう一つ包みを目の前に置けば、ちょっと気まずそうに「ありがと」と言ってその包みを受け取る。気に入ったんだ。なんか、ちょっとずつ距離が縮まっているような気がして気分がいい。
またパチパチ感に目をまん丸くしている松村北斗を見ながら私もチョコを食べる。パチパチする感じ面白くて好きなんだよね。まさかの松村北斗も同じタイプだった。共通点、みたいな?
機嫌のいい松村北斗と気分のいい私。ちょっと前までのすこし緊張するような雰囲気が全くなくなっていて居心地がいい。
…でも、居心地のいいところにずっとはいられないんだよね。もう、時間だ。
「今度は別のもの持ってくるね。意外と私達趣味合いそうだから。」
北「…合わないよ」
「そのチョコのパチパチ楽しいと思ってるでしょ?合いそうだよ」
荷物を持って、身支度を整えて、窓の外を確認しながら話す。私が立ち上がったことに驚いたような表情をしていた松村北斗も時計をみて納得したような表情をした。そう。時間なの。私。
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作者名:天羽 | 作成日時:2023年6月18日 16時