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容赦のない言葉にまた文句を言っていれば、耳をふさごうとしていた松村北斗が「あ」と気付いたように小さく声を漏らす。
北「あなた、時間いいの？」
「…あ！！まって！やばいかも！」
急いで窓の外を確認すれば、外に彼の姿。…これはまずい。
「あー…まって、どうしよ、髪の毛…跡ついてる？」
北「跡？」
「結んでた跡！」
北「…ない、と思うけど？」
「…ならいいや、んじゃね！」
なんのこと？みたいな顔をした松村北斗を置いて、急いで教室を出る。走って走って、いつもの待ち合わせ場所に行けば、丁度友達と別れる瞬間の彼。
「おまたせ！」
「ん？いや、待ってねぇけど…どうした？そんな焦った感じで」
「え！？あぁ、いや！隼人いるの見えたから、嬉しくて？」
「んはっ！なにそれ、かわいーじゃん！」
私の返答がお気に召したようで、嬉しそうに笑いながら私の頭を撫でる。よかった、と胸をなでおろし、その優しい手を受け入れる。
…平和にこのまま帰れると思った、のに。
「あれ、お前さぁ、髪、結んだ？」
「へ！？あー…いや、ちょっと、ね？」
全身が、冷たくなった気がした。必死に頭を回転させて、とりあえず、声は出す。
「へー……なんで？」
「あー、ほら、待ってる、間、…ちょっと、暑くて」
「今日そんな暑くないよな？だって、ほら、部活してくた俺が汗かいてねぇよ？」
「だ、だってほら！私、隼人と違って髪、長いしさ！これ重いし意外と暑いんだよ？」
冷たい目線で私を見る。それを気にしていることがバレたらその方がまずいかも、と思い、笑みを浮かべたまま「ね？」ともう一度言ってみる。
松村北斗！跡ついてないって言ってたじゃん！あの人髪の毛の跡って知らないわけ！？陰キャって自分でも言ってるくらいだし、そのせいでわかんないわけ！？知らないけど！！もう！！
頭の中で松村北斗の顔を思い出して、「あいつのせいで今こうなってるぞ！」とものすごい責任転換をする。
樹「あ、おつかれー」
この状況がどうなるのか、という不安と、松村北斗への苛立ちを隠しながら、隼人の様子を窺っていれば、呑気な、この私と隼人の状況には似合わない声がした。声でわかる。田中くんだ。
樹「お前、こんな人通るとこでうらやましー」
樹「つーか、Aちゃん、暑くねーの？この気温で髪降ろしてカーディガンまで着て。俺こんな暑くて溶けそうなのに」
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作者名：天羽
| 作成日時：2023年6月18日 16時
