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その目を見た瞬間に、はじかれたように身体が動いた。
「そんでさー、ちょっとちょーっとだよ！？」
北「……」
「首がさガクッて落ちただけですんごい怒るんだから！」
北「…」
「あいつ絶対私のこと嫌いだよ。田中くんなんて遅刻してきても怒られないのに！」
北「…」
「私の時はすーぐ怒るの！……って聞いてんの！？」
私が言えば、やっと本から顔を上げて、こっちにも聞こえるように分かりやすくため息をつく。
北「俺が何してるか見える？」
「本読んでる」
北「なのに話しかけてきて、ちゃんと聞けって…。無理だろ」
「なんで」
北「本、読んでるから。あなたの話に付き合う気ないの」
「ひどーい！」と声をあげ、文句を続けて言えばまた分かりやすくため息を吐き、そのまま小さい声で「…うるっさ」と呟いた。
「私のことうるさいっていうなら、あなたが喋ってよ」
北「だから、俺本読んでんの。あなたと話す気はないの」
「…じゃぁ、その本の話ししようよ」
北「話す気ないんだって…。なんでここバレたかなぁ…」
「なんでって……バレたわけじゃないよ？あなたのこと探してたわけじゃないし。ただ、私の目的地とあなたの秘密の場所が一緒だっただけ」
北「こんな場所目的地にすんなよ」
「そっくりそのまま返します。こんな場所秘密の場所にしない方がいいよ？陰キャ感がすごいから」
北「倍にして返してくんなよ…」
なんだかんだ言いながらちゃんと返答をくれる、彼氏の友だちの田中くんの友だち…の松村北斗。放課後、彼氏を待つ間の時間つぶしで通ってた教室に、少しの間行かずにいたらいつの間にかそこに通うようになってた松村北斗。
話し相手にちょうどいいや、なんて思って話しかけても最初は全くの無視だったのに、いつだか「うるさ」の一言を口に出したところから始まって、最近ではしつこく話しかければ何だかんだ返答はしてくれるようになったし、機嫌さえよければ、普通の会話もしてくれる。なんか、猫を手懐けた…みたいな感じ。
「ねぇ、あなた、勉強得意なんでしょ？」
北「得意なんてもんじゃないけど」
「田中くんが言ってたよ？あいつ頭いいんだよって」
北「…樹に比べたら成績はいいかもね」
「そんな頭のいいあなたにお願いがあるんだけど…」
北「嫌」
「先読みして断んないで！」
北「嫌です。先読みが外れてたとしても、あなたからのお願いは受けません」
「ひどい！！」
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作者名：天羽
| 作成日時：2023年6月18日 16時
