苦い (ページ8)

今日:12 hit、昨日:29 hit、合計:102,540 hit

8 ページ8

.

　「秘密の関係」ってなんだろう。なんで誰にも言っちゃダメなんだろう。そう言えば私たちが学校以外で会うときって絶対そういう事するよな。先に飲み屋さんに行くのも酔わせるため？酔わせてそういうことに持ち込むため？

　本当は「好きだから」付き合ってるのではなくて「趣味が合う自分のことを好いている都合のいい女がいたから」付き合っているのでは？

　そんなことを考えるようになって、彼と関わるとそうとしか思えなかった。

　そういうことをするための関係。でも、それを素直に言うのは悪いから付き合ってるんじゃないか。本当は他に彼女がいるのかもしれない。いなかったとしても私と恋人みた過ごしているいるところを友達とかに見られたらまずいからデートはできないのかもしれない。名前の呼び方も変えられない。

　(そうならそうって言ってよ)

　腹が立つ。私の考えがあってたとしたら人の気持ちを何だと思ってんだ。

　って、そう思っても彼のことが好きなことには変わりない。たまに見せる嘘かもしれないけど彼氏っぽい表情や行動、そういう行為中に吐かれる(嘘かもしれない)甘い言葉、表情。それを見ると付き合ったあの日とか、初めて一緒に過ごしたあの日のように浮かれてしまう。その瞬間だけは本当に恋人のように思えるから。悲しいけど悲しくない。

　いつか、「秘密の関係」が終わる日が来るかもしれない。いい意味で。

　その時のために、私は毎日妄想をしてシュミレーションをする。目を閉じて、夢の中で京本とデートをするんだ。

京「なに？もう酔ったの？」
　「…ぇ？」
京「ボーっとしてたから」

　大学の話をしているうちに彼との出会いを思い出してしまった。そのせいでぼーっとしてしまっていたようだ。私の方を見る京本と目を合わせる。

　そういえば最近、表情の変化も減ったよな。

　前ならもう少し心配そうな顔をしてくれただろうに。今は真顔のまま…いや、何なら少し嫌そうな感じ。悪かったね、話聞いてなくて。

　「ちょっと寝不足で…酔ったわけじゃないよ」
京「大丈夫？眠いの？」
　「まぁ、少しね」
京「…無理してこなくてもよかったのに」

　視線を少し逸らしておつまみをつまみながら言う。そういうこと言うから疑うようになるんだよ。

　無理してるわけじゃない。…いや、たとえめちゃくちゃ眠くてしょうがなくても無理してくるよ。どれだけ会うことで悲しくなろうとも、好きなんだもん。