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突然の名前呼びのリクエスト。なんでそんな急に名前を呼んでほしくなったのか。
「きょ、もと」
京「違うでしょ？」
「…たい、が」
目を見たまま、こういうときだけしか呼ばせてもらえない「大我」っていう呼び方をしたら、涙腺が馬鹿になったんじゃないかってくらい急に涙がボロボロと出てきた。止めようとも思わないくらいボロボロと。見られるのがなんだか悔しくて合わせていた目を慌ててそらす。
京「…A、」
「きょうもと」
ずっとスルスルと私の頬を撫でていた手が、私が涙をこぼした途端に止まる。そしてポツリと小さくか細く私の名を呼ぶ。
今しかない。とボロボロと涙が出る頭でもわかった。だから、今まで私の話しに言葉をかぶせてきていたように、次は私が京本の言葉にかぶせる。
「大我」ではなく「京本」と呼んで、ゆっくりと視線を京本に戻す。名を呼んだからか、何か言おうとする唇。ここで何か言わせたら、話せなくなるかもしれない。だから、また、かぶせる。
「このままじゃ、ダメだよ」
そう言いながら、近い距離で私に軽く被さっていた京本の胸元を押す。軽くしか押してないのにその体はスッと押されて、二人、向き合う形になる。
京「…どういう、こと？」
至極優しく甘い声。いつもとだいぶ様子が違うであろう私に対して、優しくしてくれている証拠なんだろう。声は震えていないのに、瞳はすごく揺れていて、私の言動に対する動揺が分かる。
一度、ずっと言いたかったそれを口に出してしまえば、妙に冷静で。涙はまだ出たままだけど京本の顔をちゃんと見れるくらいには落ち着いていた。
「分かってんの。京本が面倒くさい女嫌いなの。でも、今からすごいめんどくさい事、いうから」
京「う、ん」
「私達、どういう関係？」
京「え…？そりゃ、」
「だってさ、！」
動揺した様子でありながらちゃんと何かを言おうとするからあわててかぶせる。京本の言葉を聞いたらシュミレーションした話したいことが言えなくなりそうだから。それに「どういう関係？」に対する答えなんて、すぐには聞きたくない。疑問形にして声にしたのに…、こういうところが面倒くさいでしょ？
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作者名：天羽
| 作成日時：2022年12月3日 2時
