苦い (ページ16)

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樹「きょもに内緒でこういうのも悪いとは思うんだけどさ、俺の連絡先」
　「連絡先？」
樹「“秘密の関係”なんてわけわかんないことしてるからこうなるんだって後からきょも後悔するかもね」
　「まってまって、なんで連絡先！？」

　急な連絡先交換に驚いて聞いてみれば、逆に「なんで？」って顔をする。…京本とは違うタイプでこの人顔いいな。

樹「思いつめる前にさ、吐き出せた方いいでしょ？このこと知ってんの俺しかいないんでしょ？俺、話聞くくらいなら出来るよ」
　「…！」
樹「思いつめて変なことして余計関係拗れる方が嫌だろうし、俺に話して少しスッキリしてきょもと会ってれば、いつかちゃんと話できるでしょ」
　「樹くん…！」
樹「きょもにはばれないようにね。これ以上拗れたら大変でしょ」
　「それはもちろん！」

　ごめん。陽キャのくせに、とか変態っぽいとか言って。今まで出会った人でいないくらいの優しい人だよ、あなたは！

　少しだけ。少しだけ京本に悪い気がしながらも差し出されていた携帯の画面を読み取り連絡先を交換した。

　画面に表示された“田中樹”の文字。優しさを知ったからかこの文字だけで少し落ち着く感じがした。

樹「…にしてもそんなにカフェラテ苦いの？全然減らないじゃん」
　「え？あぁ、私にはちょっとね。私甘い方好きだから」
樹「シロップとかもらったら？」
　「ついてこなかったからないのかと思って」
樹「聞けばいいじゃん。…あ、すみません」

　店員さんを呼び止めた樹くんがその店員さんにシロップがあるか聞いてくれた。まさかそんなことをしてくれると思ってなかったからまた優しさに心打たれる。マジで優しくない？

樹「つけ忘れだってよ。いつもはちゃんついてんだって」
　「そう、なんだ。ありがと、聞いてくれて」
樹「いーえ。こういうのは聞いてみるもんだよ？…あぁ、ありがとうございます」

　申し訳なさそうに店員さんが持ってきてくれたシロップをチャラくていかつい見た目のくせに人当たりのいい笑顔で受け取る。そしてそれをそのまま私の方へ。

　「ありがと…」
樹「どーいたしまして」

　何でもないように自分のコーヒーを飲む。

　もらったシロップをいれたカフェラテは、すでに飲んでいて量が減っていたのもあってか少し甘みを強く感じた。