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 「呼べってこと…っすか?」
樹「もちろん」



 ちょっと意地悪な表情をした樹さんが言う。そんな急には…、なんて思うけど、ジェシーの時呼べたし、できる、かも?


 変な緊張を持ったまま小さく息を吸う。



 「…樹」
樹「はーい?」
 「これでいいですか?」
樹「いいですか?」
 「…これでいいの?」



 呼ぶだけで変な緊張してるっていうのに敬語を抜けと口で言わずに促してくる感じ。意地悪感凄いんだけど。


 とりあえず呼んで、敬語もなんとか抜いて一言言えばにんまり笑って頷く。…でも、これでは終わらないんだよなぁ。


 なぜか先に出たのは樹の名前。もう一つの方を呼ぶのはなんか…より緊張する。心臓の音するの、久々に聞いてる気がするくらい。


 その緊張で口から声が出ない。その間にも目はこっちを向いてるし、高地さんだって何を考えているのか、じっとこっちを見ている。やめてよ。一応今仕事中なのに、なんでこうなった。


 …そうじゃん、仕事中だよ。


 変な方に話が行ってしまったから一瞬忘れてしまっていたけど仕事中。慌てて店内を確認。よかった他に誰もいない。


 商品は全部レジに通していたから画面に表示される金額を伝えよう、と画面を確認してジェシーの方を見る。


 …伝えなくても分かってたか。財布の中見てるわ。



 「ごめん、一瞬仕事忘れてた」
ジ「いいのいいの。余計なこと話しかけてんの俺らだしー。それよりも、ほら、高地待ってるよ?」
 「…そういうのやめて、余計言い辛いじゃん」
ジ「何を言い辛いことがあんの?」
 「呼び方変えるって、なんか、緊張するじゃん」
樹「俺には出来たじゃん」
ジ「こーちは?できるよね?」
高「今ふるなよ…」



 私の言い辛さが伝わったのか、内容は変えずとも方向が高地さんの方へ。ちょっとホッとしたけど…まてこれ、今までと違う呼び方される、んだよね?今までも敬語じゃないのは何回かあった気がするけど、呼び捨てって…。


 呼び方ひとつでなんでこんなに心乱れてるのか、自分でもよくわかんない。


 少し気持ちを落ち着けようとジェシーの出したお金を手に取り数えていく。



高「…A…でもいい?」
 「うぇ……あ、…はい」



 危なくお金、落とすとこだった…。


 唐突に呼び捨てで呼ばれた名前。呼ばれることにも緊張があったのに、好み、だろうか。ジェシーに呼ばれるよりも樹に呼ばれるよりもなんだか心地が良くて、気持ちが落ち着いた。

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作者名:天羽 | 作成日時:2022年11月30日 3時

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