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ジ「…えっと、大丈夫そ？」
「…大丈夫」
ジ「あー…なら、いいんだけど…」
「袋、いりますよね？」
ジ「う、ん。…あー…」
めちゃくちゃ気を遣わせてしまってる。そりゃそうだろうな。多分今の私、すごく目が腫れてる。
数時間前、大我…というか、バンドの練習のあと、メンバーに「バンドをやめたい」ということを告げ、それ以外もう他に方法がないことまで告げた後、“感情のぶつけ合い”みたいな感じで、主に私と大我の言い争うになった。
「どうしてもやめなきゃならないのか」「他の方法が絶対にあるはず」「なんでもっと早く病院に行かないんだ、相談をしないんだ」「連れて行けばよかった」と怒りながら言う大我と、
「この先のことを考えるとやめるほかない」「続けたところで迷惑をかける」「ここまでひどいと思わなかった」「こうなるとは思っていなかった」と怒りながら言う私。
ぶつけ合って、その場で解決なんて終いことが分かった。頭を冷やす必要があると思った。お互いに。だから、
「今年でやめるから。それまでは、最近みたいにかばったりしないで、今まで通りにやるから」
と決めていたことを伝え逃げるようにその場を離れた。離れて、人気のないところで立ち止まったその瞬間。ボロボロと涙がこぼれた。
なんで、という明確な理由は分かんない。
理解してもらえなかったこと。怒鳴り合ったこと。言い残してきた自分の言葉のせいで、もうどうしようもなくしてしまったこと。やめるまでの間、あの空気感のままなのかという不安。なんか、もう、いろんなことが頭を巡って、その一つ一つが浮かぶたび、怒鳴り合いを思い出す度、大きな声を出したせいでまた荒れてしまったであろう喉から出るガサガサな「うぅ〜っ」という声と共に涙が出て止まらなかった。
それをこすってしまったせいで崩れたメイクと赤くなった目元を少しでも直してバイトに向かおうと家に戻った。家に戻ればまた、バンドで使っていた色んなものとか、思い出がそこにあって、涙が出てきた。
そんなことをしていれば本当に少ししか目は冷やせなかったし、メイクで誤魔化そうにもどうにもならなくて…。ひどい顔のまま出勤。
そしてこういう日に限って、知り合いが来ちゃう。いつも通り宅飲みをする、というジェシーと今日は森本さん。
目元は腫れてるし、言い合った後だ。いつも通りにできるかといわれればできなくて…二人はすごく不審そうにする。
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作者名：天羽
| 作成日時：2022年11月30日 3時
