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side.k
高「言えることなら、聞く…けど」
この道を曲がればもうすぐAの家の方。でも、このまま家に向かって「ついたよ」って降ろすのはなんか、さっきまでとは違う意味で心配で、曲がらずにまっすぐ進んだ。様子を見て、戻ってくればいい。
「まぁ、ただ単に喉が弱いだけなんだけどさ。今までと同じ。荒れたり枯れたりしやすくて。…最近はそれが全然治んなくてさ。」
「騙し騙しやってたんだけど、ライブに間に合わないことも増えてきて。…だから庇って歌う方法探してるけどうまくいかないし」
「で、病院ではこれからも治りにくくなる一方だし、このままだと治らないまま、また負担かけて喉おかしくして。それも治んないまま、またおかしくして。で、綺麗な声でなくなるかもよ？って。その状態で歌い続けられるの？って」
「日常生活をね、普通の声で負担なく過ごすには、歌って負担かけちゃだめだよって言われちゃった。どうしても、喉に負担かける歌い方しちゃうからさ。」
「歌、仕事にできるかもしれなかったけど…。無理じゃん。これから何年も日常生活で使う声を犠牲にして、いつまでできるかわかんない歌を続けるより、長く人と喋る方を、取りたいって、思っちゃって」
「…」
「あーあ！もうやだな！って。大我にちゃんと言えない自分にも、こんなことになっちゃったことにも。それでやけ酒、みたいな」
「…やけ酒、してよかった。こうして優吾くん送ってくれてるし、話聞いてくれちゃってるし？ありがとね」
いつもよりも何倍も機嫌のいい喋り方で、声を震わせながら話し切ったのか、俺のお腹に回していた手の平でポンポン、とお腹を優しく叩かれる。その手が震えているような気がしたのは勘違い、だろうか。いや、声も震えてるし、多分思っている通り、かもしれない。
高「話くらいは、聞けるよ。喉、弱いのも気を遣ってたのも知ってるし」
「…そーだね。話してたね」
高「…俺、メンタルサポーターなの。」
「…えぇ？なにそれ」
高「まぁ、ジェシーとかと言ってるだけ、だけどね。まぁ、人の相談事とかは、よく聞く方なの」
「優吾くん、話しやすいもんね。相談したくなっちゃうね」
高「そんな俺から一つ言うとしたらさ、」
「うん」
高「そういうときね、泣いていいんだよ。いろんなことが嫌になってお酒に頼っちゃうくらいの時は、我慢しないで泣いていいの。泣いてからこれからの事、考えてもいいんだよ」
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作者名：天羽
| 作成日時：2022年11月30日 3時
