きっと (ページ5)

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　でも、お店に入るのも迷惑だろうし…。どうしようもないじゃん。あぁ、バカだよな。こんなだから、うまくいかないんだ。なにも。

　思考は全部暗い方に行ってしまう。一つため息をついて、中に入る気はないのに、近くのお店の軒下に入る。もう少し雨が弱まったら帰るから、少しだけ許してください。と、心の中で謝っておいた。

　「中、入りますか？」

　軒下ですることもなくただただ降り続ける雨を見る。びしょびしょに濡れて、茫然と雨をみている。さすがに哀れに思われたのか、店の中から優しそうで紳士的なおじさんが出てきて優しい言葉をかけてくれる。

　「…大丈夫です。こんなに濡れてるし」
　「濡れてるからです。どうぞ」
　「雨、少しでも弱まったら出て行くので、本当に、大丈夫です」
　「それまでに風邪ひきます。…弱まるまでだけでも、ね」

　断ったのに、ドアを開けて優しく促されてしまえば、それ以上に断りの言葉を入れることの方が申し訳なくて、お言葉に甘えて中に入れてもらう。ほわっと温かい店内になんだか溶かされていくような気がした。

　見回して気付いたがここはバーだったみたいだ。カウンターがあって、お酒がいっぱいあって…。思い返せば先ほどのおじさん…多分マスターだろう人の服もよくバーの人が着ているようなものだった。

　一度奥に行ったマスターが戻ってくる。手には何枚ものタオル。何枚かを椅子に敷き、残りを渡してくれる。

　「よかったら使ってください。席も、ここどうぞ」
　「…本当にありがとうございます」
　「いいえ。何か飲みます？」
　「えっと…」

　手渡されたタオルで髪の毛と服を少し拭きながら置かれたメニューを見る。当たり前だけどお酒ばかり。

　…もういいや。やけ酒って言葉もあるし、もうやけだ。飲んでやる。雨宿りしたのがバーだったっていうのも運命だろう。

　たくさんのカタカナが並ぶメニュー。お酒に詳しくはないから名前を見ただけじゃよくわかんない。だから、惹かれる名前のものにしようと決めて上から見ていけば、一つの名前に目を奪われる。

　「…この、ブルームーンっていうの、お願いします」

　私の声を聞いたマスターはすぐにカクテルを作り始める。タオルを敷かれた椅子に座って、タオルを肩にかけてマスターの動きを見る。流れるように作られていくブルームーンというお酒。

　「どうぞ」

　目のまえに差し出されたグラスにはきれいな青色が入っていた。