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やっと出た声はとんでもなく間抜けな感じで。今聞いたばかりの言葉だったから、笑いながら「そう言ってんだけど」って言われる。
樹「俺、さ。Aにすげー申し訳ないこといっぱいしたよな。他の女と勘違いしたようなこと言ったり、名前間違えたり」
「それだけじゃ足んない」
樹「えー…申し訳ないことのツートップだと思ったけど…まだあった?」
「女の人の香水の匂いした。口紅、家に置いてあった。女の人からの連絡、見えちゃった。アクセサリーも置いてあった。」
樹「……マジでごめん」
言いながらまたじんわりと出てきてしまった涙をこぼさないようにまた瞬きで乾かす。
樹「もう、そういうことないようにするから。俺と一緒にいてよ」
少しかがんで私に視線を合わせる。相変わらずの柔らかい視線で見つめられると、胸の内がボロボロと全部出てしまう。
「わ、たしさ。夜中に樹と行くコンビニも、一緒に行くスーパーも、ただのお散歩も、いれてくれるココアも全部好きだった」
樹「俺も」
「でも、他の人ともそういうことしてるんだって思うと、全部嫌いだった。」
樹「……俺、もう信用ない?」
さっきから、他の女がいたことに関する恨み言を言う私に、徐々に不安を視線に含ませる樹。信用?あるわけないじゃないか。好き、と言われても不安が勝ってて素直に喜べないんだから。
「…信用させて」
樹「…というと?」
「信用なんて、ないから。…これから、信用させていって」
私なりの精いっぱいの強がりを含めて言う。意地っ張りで、強がりな私が好きなんでしょ?なら察してよ。
私の言葉に目を丸くした樹の視線に含まれていた不安そうな感じはなくなっていた。察しのいい人だから、わかってくれたんだろう。
樹「当たり前」
ニッといつも通りの自信満々な感じの表情をして、ぐしゃぐしゃと私の頭を撫でる。そのままの勢いで私の体を抱き寄せる。
樹「これからもよろしくね」
「…改めて、ね」
樹「厳しいなー。」
浮かれたように笑う樹。それにつられて笑いそうになるけど、それを見られるのが恥ずかしくて、樹の胸に顔を埋めた。
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作者名:天羽 | 作成日時:2022年6月15日 2時