aversion 2 (ページ41)

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　「…本当、だけど。というか、多分、もうこれ以上何もない、なんか、出るもん全部出た、みたいな…」

　私の返事に満足そうな顔をする田中くん。

樹「なら、おれやっぱりちゃんと頑張ろっ」
　「…どうぞ、ご勝手に」
樹「え、マジで！？いいのね！？」

　すごく前向きな言葉とかじゃないけど、田中くんは思った通りポジティブにとらえたようだ。

　京本があの曲を作る時、話をしたときに気付いたことを思い出した。田中くんがあの日、絡んできてくれたおかげで、私はあのままもっと悲しいところまで行くことなく、いつの間にかあいつに対する気持ちを失くし、普通に戻ることが出来た。

　そういう点でも感謝はしてるし、こういうときとか、近くにいてくれることにも感謝はある。ポジティブなところもいつもはうざいけど、こういう時は助かるというか…。絶対本人には言わないけど。

　だから、少しだけ、田中くんの行動を許してもいいかなって。嫌いって突っぱねるんじゃなくて、少しだけ、受け入れても…。なんて思っちゃって。本人には絶対言わないけど！！

樹「自分で言ったからね。覚悟しててね」
　「これまで以上に迷惑かけてきたら怒るから」
樹「怒るだけならいくらでも！」
　「…きっついって」
樹「きついって言わないで！…あ！次ジェシー達じゃん！」

　明るくちょっと気持ち悪いことを言う田中くんに思わず口元が笑ってしまう。まだ視界は少し滲んでいるけど、ほとんど涙は止まっていた。風に乗って田中くんの香水の香りがしても、あの日を連想する、なんてことはない。気持ちもすっきりしていて、なんだか、本当に次に進めそうな、そんな感じ。…田中くんは絶対にないけど。

　私よりも楽しそうに笑っている田中くんが撫でていた手を頭から離し、ステージを指さしている。それにつられるようにステージの端で待機している様子の二人が後夜祭のスタッフをしている生徒と楽しそうに笑っている。二人とも声デカいんだから、京本の邪魔になってないだろうか。

　少しして京本たちのステージが終わった。そして次に出てくるのはジェシーと森本くん。ダンスをするらしい、と司会の人と話している。

　京本だけ見たら帰ろうと思ったけど、次も知り合いなら…見ちゃってもいいかな。

　大きな音で鳴る音楽に合わせて踊る二人。どっちも大きいし、存在感があるからダンスがすごい似合っていた。