aversion 2 (ページ5)

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　夏祭りの最後に行われる打ち上げ花火が良く見える場所に向かう人の流れに逆らってゴミ捨て場に向かう。カップル、家族、友達同士…いろいろな人とすれ違う。

　浴衣、甚平、髪の毛、屋台、服…夏特有のカラフルさに目を奪われながらもゴミ捨て場が見えるところまで来た。棒を捨ててすぐにさっきまでの場所に戻らなきゃ。

　そんなことを思った瞬間、一つの色に目を奪われた。鮮やかなピンク。

　思わず振り返ってそれを目で追う。大きなピンクの花が描いてある浴衣を纏った女の子。そのお人だけでも見覚えがあった。…けど、その隣の方がもっと見覚えがあった。

　(隼人…)

　その女の子の隣を歩く浴衣姿の男の人は見間違えるわけもなく元カレで。あっちは私の存在に気付いていないけど、人混みの中、私にはその二人の姿だけが目に入った。

　…やっぱり、あいつは本当は女の子らしい女の子の方がよかったんだ。去年、私があいつと一緒にこの祭りに来た時、私は青い浴衣を着たはず。でも、今あいつの隣を歩くのは真逆のピンク色。

　長い髪だって綺麗にまとめられていて…。あの時、私が髪の毛を切ったときに言ってきた言葉で察したけど、私には長い髪は合わなかったんだ。だから今、長い髪やピンク色の似合う女の子らしい女の子を隣にしているんだ。

　足を止めて振り返って、その二人が見えなくなるまでその方向を眺めながらどうしようもないことを考えて。姿が見えなくなった時にハッと思い出す。田中くんの顔を。

　(早く戻らないと)

　気持ちを切り替えるように軽く頭を振って、すぐ近くのごみ捨て場に棒を捨てる。そして、元カレたちに追いつかないように、でも、出来るだけ急いで、さっきの場所に戻った。

樹「Aちゃん…！」

　急いで戻ったつもり、だったけど遅かったらしい。焼きそばが入ってるであろう袋を手に提げて、私がいた場所でキョロキョロとしていた田中くんが私を見つけると心底安心した、みたいな顔で私の方まで駆け寄ってくる。

樹「ここにいるって言ったじゃん！」
　「りんご飴の棒、捨てたくて。ちょっとそこまで」
樹「一言言ってよ…焦った」
　「…ごめん」
樹「はぐれたわけじゃなくてよかった」

　安心した、みたいな顔のままで私を見つめる。私服の田中くんと私服の私。さっき見た浴衣同士のあの二人の姿と比較みたいなことを頭でしてしまって、夏祭りで浮かれていた気持ちが少しだけ沈んだのが分かった。