aversion 2 (ページ37)

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　話すこと話してスッキリしたような顔で私を見る。いつの間にか手は離れていた。

樹「こういう聞き方変だけど、許してくれる？」
　「ほんと、変なこと言うね。許すわけないじゃん」
樹「だと思った」
　「…でも、」

　田中くんに絡まれるようになってからずっとついて回ってたいろんな気持ちの籠った視線たち。それに対してどうにかしようと思ってくれていたことはちょっとだけ嬉しかった。田中くんが絡んでこないようになれば解決ではあるけど。

　「…効果があったら、少しだけ許してあげる」

　田中くんが友達に言って回ったこととか、ステージ上の言葉とか、失敗もあったかもしれないけど、少しでもそれらが効果あって視線が減ったことを感じれたらちょっとだけ、本当に六分の一食らい許してあげてもいいかな、なんて思ってしまった。

樹「大丈夫。効果あるはず…。と言いたいけど盛大に失敗した後だからなー」
　「いつも自信満々なくせに」
樹「さすがに今回は堪えた。…というか、俺何回も好きって言ったけど、少しも照れないね」
　「だから言ってんじゃん、嫌いなの。嫌いな人からの好意とか、もう何も思わない」
樹「きびしー！」

　いつもの調子に戻った田中くんが大きい声で笑う。

　それにかぶさるように、突然、大きな音が鳴る。びっくりして思わず肩を震わせる。視線の先で田中くんはニィッと笑っていた。

樹「きてきて」

　廊下側の壁に背を預けて立っていた私に向き合うように立っていた田中くんが急に窓際の方に向かっていき、私に手招きする。急なことに自然と体がそれに従う。

　窓の外を指さす田中くんの隣に立って、指さす方を見る。

　「始まったんだ」
樹「ここ、よく見えるでしょ？」

　窓の外は中庭、指さす先にはステージ。あの、北斗くん的に言うなら事件現場のステージ。その上で文化祭の実行委員の人が楽しそうに視界をしている。その下では盛り上がってる生徒たち。

　ということは廊下に人はもう少ないだろうし、さっさと帰ってもいいんだけど、気になることがひとつ。

　「空いてる部屋、適当に入ったのかと思ったけど…狙ってここにした？」
樹「どうでしょう」

　楽しそうに笑う顔にさっきの「よく見えるでしょ？」という見えることが分かっていた、みたいなセリフ。…絶対狙ってここ連れてきたじゃん。最悪、後夜祭見ないみたいなこと言ってたのに、狙いやがったな。