aversion 2 (ページ3)

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　森本くんがでっかい飴を全部口に入れて…。その後があると少し期待して待っていたけど中々田中くんの声が聞こえない。夏祭りで周りに人も多いから私の耳が田中くんの声を聞き逃したのかも知れない、なんて田中くんの方をチラッと見る。

　「田中、くん？」

　チラッと見た田中くんは私の方を見ていた。さっきまでの話していたテンションとも、甘さのある表情とも、ニコニコとした感じでもない。何かを耐えるような表情で。だから、思わず名前を呼んでしまった。私の声にハッとしたような表情をして視線をそらして「ん？」なんて何事もなかったように聞いてくる。

　「…いや、なんでも、ない。」
樹「ん－、そう？ならいいんだけど。…あ！射的あるじゃん！行こ！」

　何かを誤魔化すようにわざとらしくテンションを上げて私の手首を掴む。そのわざとらしさ、絶対さっきの表情に関係してるじゃん。

　もしかしたら、その理由は聞かれたくないものなのかもしれない。だからわざとテンションを上げて誤魔化そうとしてるのかもしれない。私にだってそういうときあるし。

　悔しいけど一瞬心配してしまった気持ちを抑えて、いつも通りの感じで掴まれた手首を振りほどくように動かし「離して」なんて言うとパッと離される。

樹「Aちゃん、なんかほしいのある？」
　「え？」
樹「ほら、あっち」

　手首を掴んで連れてこられていた射的の屋台。残り数人で田中くんの番、という感じの時に私に聞く。

　「自分の好きなもの狙えばいいじゃん」
樹「好きなのあってやりたいわけじゃないんだよなー。射的っていうものをしたいだけ、というか。俺、ゲーム好きだから」
　「あっそ。」
樹「興味なしじゃん」

　私の返答にゲラゲラ笑う田中くん。何かを耐えていたようなあの感じももうない。いつも通りに戻る。さっきの私の対応は間違っていなかったのかもしれない。

　「…特に、ないな」
樹「え？」
　「ほしいもの。田中くんが聞いたんじゃん」
樹「あぁ、それね。ないなら…あれ狙おうかな」

　そう言って指さすのは小さな熊のマスコット。…いや、あれ小さくない？

　「いけんの？」
樹「さぁ」
　「得意なの？」
樹「別に得意ってわけじゃないけど、自信はある」
　「その自信はどこからくるの…」

　そんなことを話している間についに田中くんの番になった。